1-1.ぶりっ子ちゃんの後悔 ページ2
大息とともに、赤ペンを置いた。
疲労困憊の右手をぶらぶらさせながら伸びをする。勉強椅子はわたしの背中の重みに悲鳴のような軋みを小さく上げた。
机の上には余さずやっつけた夏休みの宿題の束。その片隅で、置き時計は密かに日付を跨ごうとしていた。長針があと何周かすれば、宿題に追われ続けていた私の夏休みが終わる。つまり明日からは……。そう考えた瞬間、無性に嫌になってきた。制服に袖を通して登校する自分の姿を想像するだけでのたうち回りたくなる。
今終えた数学の宿題は、解いておきながら毛ほども理解していない。それもそのはず、脳死で解答書にあるとおり赤ペンで書き写しただけだから。でも全部赤なのは流石にマズイと思ったので、ところどころシャーペンで解答書の文言をちょっと変えながら書いた。さらに書いたり消したりを繰り返して消した跡を雑に残すことで、苦労して解きましたアピールも忘れない。サボりたい人がよくやる手法だ。初めてにしては我ながら上出来だと思う。
――こんなはずじゃ……。
やってる途中で虚しくなった。時間の無駄だと思った。
道を踏み外していなければ、こんな小賢しい真似をする必要はなかったはずだ。
――こんなはずじゃなかった。
ハンガーにかけられた制服を一瞥した。視線を戻し、今度は明日身につけるアクセサリーをぼんやりと見た。
――こんなはずじゃなかったのに。
結局、茶髪もツインテールもリボンもカチューシャもコンタクトレンズも、そして媚を押し売る甘えた声も眼差しも、すべて失敗だった。
一体どうして。どこから間違えたんだろう。
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酔風 - 面白かったです…夏目先輩かっけぇ!萌ちゃん許せるどころかファンになりそう…。続編読んできます(`・ω・´)ゞ (2021年7月25日 10時) (レス) id: d8696aafac (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 夏目せんぱぁああい!!いつか、いつか言紡高校に入学してもいいですかっ!?!? (2021年7月19日 17時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - 初めまして!こんな小説を求めていました!この小説を読んだ方が、ぶりっ子=悪女とかでは無くて、ぶりっ子は一つの個性なんだなって思ってもらえると良いですね!ももたんめっちゃ好きです!頑張ってください〜! (2021年7月17日 15時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - 「ふんぬぁぁああ゛ぁあ゛ァあッ!゛!」 握力計ったときのこれ好きですwwwwwww (2021年7月17日 14時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます!!確かにぶりっ子の言動を見ていると、自分にも思い当たる節があったり……なんてことが自分にもあったりしました(笑)「ぶりっ子のふり見て我が振り直せ」ですね(汗)夏目先輩を好きになってもらえてすごく嬉しいです! (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆の字 | 作成日時:2019年9月9日 17時