2-2.ぶりっ子ちゃんの緊張 ページ20
教室に戻った。最前列真ん中の自分の席(夏休み前に席替えをした)に座り、そこから動かずじっと先生が来るのを待った。
みんなも転校生の話でもちきりだ。いつものようにわたしの後ろでワイワイ盛り上がりながらも、今日は異様な緊張感を漂わせている。足音が近づく度にみんなは急に黙りこくり、わたしもつられてドアに注目する。大谷先生じゃないのが分かると、安心したのかがっかりしたのか談笑を再開する。また足音が近づくとハッとする。それを繰り返すうちに、じれったさに脳天がじりじり熱くなる。手に汗を握り、何かに耐え忍ぶようにして待った。
――あ。このズンズンと気圧されるような大股の足音は。姿が見えるより早くみんなはいそいそと席に戻った。
「はいホームルーム始めます」
大谷先生がついに来た。これといって緊張している様子はなく、いつも通り教卓に手紙類をドスンッ! と荒っぽく置き、最前列真ん中のわたしをビビらせる。
「みんな気になってると思うけど、今日からうちのクラスに新しく転校生が来ます。じゃあ早速――」
「ちょ、ちょっと待ってください大谷ティーチャー! まだ心の準備が――」
最後列端っこの、時折わたしに構ってくれる女子リーダーのよく通る大きい声が先生を遮った。
「夏休み前にあらかじめ言うたぞ。じゅうぶん時間はあったやろ」
「そ、そうですけど〜〜……っ」
わたしも女子リーダーと同じ気持ちだった。さっきまでじらさないでくれ早く来い早く来いといてもたってもいられなかったのに、いざ来るとなると二の足を踏んでしまう。でも大谷先生は、そんなわたしたちの複雑な焦燥感を汲み取る気はさらさらなさそうに、「どうぞー」と閉まったドアの向こうの人物に声をかけた。
――ああ、来る!
わたしは目を閉じて、ゆっくり十を数えた。そろそろドアが開くころか。そろそろ教卓に向かって歩くころか。そろそろ――目の前に立っているころか。ところがドアが開く音すらしない。目を開けて最初に見たのは、怪訝そうにまた「どうぞー」と言う大谷先生だった。
すると、少ししてから、どんなに慎重に開けてもガラガラとうるさく鳴るドアが、音も立てずに開かれた。
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酔風 - 面白かったです…夏目先輩かっけぇ!萌ちゃん許せるどころかファンになりそう…。続編読んできます(`・ω・´)ゞ (2021年7月25日 10時) (レス) id: d8696aafac (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 夏目せんぱぁああい!!いつか、いつか言紡高校に入学してもいいですかっ!?!? (2021年7月19日 17時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - 初めまして!こんな小説を求めていました!この小説を読んだ方が、ぶりっ子=悪女とかでは無くて、ぶりっ子は一つの個性なんだなって思ってもらえると良いですね!ももたんめっちゃ好きです!頑張ってください〜! (2021年7月17日 15時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - 「ふんぬぁぁああ゛ぁあ゛ァあッ!゛!」 握力計ったときのこれ好きですwwwwwww (2021年7月17日 14時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます!!確かにぶりっ子の言動を見ていると、自分にも思い当たる節があったり……なんてことが自分にもあったりしました(笑)「ぶりっ子のふり見て我が振り直せ」ですね(汗)夏目先輩を好きになってもらえてすごく嬉しいです! (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆の字 | 作成日時:2019年9月9日 17時