1-15.ぶりっ子ちゃんの体育 ページ16
わたしは体育の時間でもぶりっ子を貫いた――とは胸を張って言えない。
わたしは生粋の運動音痴だ。50メートル走のタイムが二桁を切ったためしがない。体育とは、先生と運動部が運動音痴を晒し上げて嘲笑うくそったれな科目だと思い込んでいる。大雨でぐちゃぐちゃのドロドロになったグラウンドを見て胸がすくような思いになったことさえある。
新学期といえばスポーツテストだ。憂鬱な気分を引きずりつつも、最初に握力を計測した。
「えー! 右15って冗談っしょ! もーまたかわいこぶっちゃって〜ホントはもっとあるんでしょ〜」
と、隣で計測していた女子に驚かれた。以前トイレでわたしの話をしていたグループのリーダー格らしい子だ。ぼっちのわたしにも時折話しかけてくれる、明るくて優しくてキラキラしている、まさにわたしの思い描いていた理想像がそのまま具現化したような子だった。
「そ、そんなことないよぉ〜。もえたんはいつでも本気だよぉ〜!」
ぶりっ子はブレない。りうむちゃんだってそうだ。本当は話しかけられて内心ビビっているが、キャラを崩さぬよう必死に振る舞った。
「まぁたまた〜。今度はちゃんとやってみ? ほら」
半ば強引に再度握力計を握らされる。けれど何度やっても結果は同じだった。ぶりっ子は運動音痴を演じるものだから疑うのも無理はないが、わたしは生粋の運動音痴だ。だからといってできないながらも本気でやってきたつもりだ。そう訴えても、「またまた〜」で済まされる。信じてくれない。わたしはヤケクソになって、
「ふんぬぁぁああ゛ぁあ゛ァあッ!゛!」
と、握り潰さんばかりにありったけの力を握力計にぶち込んだ。
やっぱり結果は15だった。
手のひらが真っ赤になった。それを女子に見せるとたいそう驚かれた。
「……もえたんごめん。本気だったんだね」
あまりに申し訳なさそうに謝られたので、わたしも申し訳なくなって、「もえたんは握力計さんに優しいのぉ〜♪」とあざとくポーズを決めた。
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酔風 - 面白かったです…夏目先輩かっけぇ!萌ちゃん許せるどころかファンになりそう…。続編読んできます(`・ω・´)ゞ (2021年7月25日 10時) (レス) id: d8696aafac (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 夏目せんぱぁああい!!いつか、いつか言紡高校に入学してもいいですかっ!?!? (2021年7月19日 17時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - 初めまして!こんな小説を求めていました!この小説を読んだ方が、ぶりっ子=悪女とかでは無くて、ぶりっ子は一つの個性なんだなって思ってもらえると良いですね!ももたんめっちゃ好きです!頑張ってください〜! (2021年7月17日 15時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - 「ふんぬぁぁああ゛ぁあ゛ァあッ!゛!」 握力計ったときのこれ好きですwwwwwww (2021年7月17日 14時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます!!確かにぶりっ子の言動を見ていると、自分にも思い当たる節があったり……なんてことが自分にもあったりしました(笑)「ぶりっ子のふり見て我が振り直せ」ですね(汗)夏目先輩を好きになってもらえてすごく嬉しいです! (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆の字 | 作成日時:2019年9月9日 17時