嘘吐き ページ10
あれから相楽は女性に場所を教わり女子生徒の母親の墓に向かった。まだ新しいそれは光を反射し他のどれよりもてかてかと光っている。相楽はしゃがみ込み、黙って墓石の上に手紙とお守りを並べた。そして静かに両手を合わせ頭を下げる。
「あんた、随分娘に愛されてんだな」
誰だこの男はとあの世にいる母親は思っているかもしれない。いやそれよりこんな場所でも煙草を吸うのをやめない相楽に失礼な男だと怒っているのかもしれない。突然現れ、会ったことがないにも関わらずあんた呼ばわりをし、煙草を吸い続け、花一つも持ってこない。相楽は明らかに非常識な人間である。
「……ふー」
本人も長居をするつもりはないらしく、よっこらしょと立ち上がるとおもむろに並べた手紙とお守りを取った。
そして自身の能力で一気に燃やし灰にする。
女子生徒の想いの詰まった手紙とお守りが一瞬にして灰となり風と共に飛ばされていく。
相楽は墓石を見つめ、告げた。
「安心しろ。俺はあんたの娘の笑顔を守ってやる」
そう言った相楽も、曲げられない意志を持ち笑っていた。
*
「あ、相楽先生!」
「おう、お早う」
次の日の日曜日、相楽と女子生徒は学園の前で待ち合わせをしていた。現在の時刻は午前九時四十五分。約束の時間は十時で相楽も十五分前にやってきたのに、女子生徒はそれより早く来て待っていた。
今日二人が集まったのは、言うまでもなく昨日の結果を話すためだ。伝えるなら出来るだけ早い方がいいと考えたのは相楽で、電話より実際にあった方がいいと考えたのは女子生徒である。ただ結果を話すためだけの待ち合わせ。数分で解散するだろうが、女子生徒にとってはどんな約束よりも大事な約束だ。
「それで、あの……単刀直入に、お母さんはどうでしたか?」
女子生徒が恐る恐る問う。緊張しているのか両手は力一杯握りしめて白くなっていた。
「ああ、」
その姿を見て、相楽は緊張をほぐすように笑った。
「__ピンピンしてたぜ。面白い人だな。オジサン意気投合して長話しちまったわ」
「!!」
ほら見ろ、この女子生徒の笑顔を。安心しきった顔を。頬を伝った喜びの涙を。笑っていられるのが一番なんだ。真実なんて知らなくていい。知る必要はない。
「良かったな」
この少女の笑顔が消えてしまわぬように。
相楽はゆるりと微笑んだ。
2人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
●龍●(プロフ) - そのためならいくら責め立てられようと構わない。そういう考えなのです…。文字制限で削ってしまった部分でもあったので、怜皇様が察してくださってとても嬉しいです…!! (2018年8月14日 11時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 怜皇さん» わーまたまたコメントありがとうございます!! そうなんです、相楽の嘘は将来気づかれ責められたり憎まれてりしてしまうもので、けれどそれを覚悟の上で嘘を吐いたのです。今女子生徒が絶望に落ちるよりも、笑顔でいる方がいい。 (2018年8月14日 11時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
怜皇(プロフ) - わっわっそんな相楽さん(´;ω;`)相楽さんが女子生徒の笑顔を守るために嘘をつくところ、すごく心痛みました…卒業して外に出るようになった生徒に攻められ恨まれる可能性だってあるのに…相楽さん(´;ω;`) (2018年8月13日 21時) (レス) id: 0ed6205140 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 怜皇さん» 怜皇様はどう思われるだろうか…と不安でした。なのでこうしてわざわざ来てくださり感想を伝えてくださった怜皇様の心遣いがとても嬉しいです!!リズィーさんと相楽と、そして怜皇様と作り上げた素敵な関係が表現できていたなら良かったです…! (2018年8月11日 22時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 怜皇さん» わわわ怜皇様じゃないですか…!!こんばんは、早速見てくださりありがとうございます…!!こんなにもたくさんお褒めいただき、光栄であると共に本当に心から嬉しいです!今回は前話より更にリズィーさんを大胆に動かしてしまったような気がしたので、 (2018年8月11日 22時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ