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__そして、起床してから数時間後。
何より重要な用事を終えたドンは、誰もいない教室の椅子に座り込んでいた。
頭がぼんやりとする。ふわふわと浮ついた意識とは反対に頭と喉の痛みは激しさを増していた。休息を求める身体を無理に動かし、回らない脳みそを必死に回転させ、いつも通りに笑い周りからよくうるさいと言われる声を出し過ごしていたのだから当然だ。
登校した際に自分が熱があることは伝えた。周りの生徒たちは「無理するなよ」などとドンに声をかけ、それでもそこまでの辛さを感じさせずいつも通り愉快そうに笑って過ごすドンに「まあドンだし、あの様子だし、大したことはないんだろうな」と考え、それ以上何をするでもなく時間を過ごしていた。今が切羽詰まった時期であり、七年生の誰もが下手に単位を落とすことは出来ないとわかっていたからの対応でもある。微熱程度では皆当然のように登校してくるのだ、誰もがそのことに慣れていた。
自然に、昨日と変わらずぶはは! と笑い声を響かせるドンが高熱を出していることなど、誰も気づかない。
周りに風邪を移さないように、最大限の行動はとった。用がない限り他の生徒から十分過ぎるほどの距離を取り一人で過ごしたし、予め保健医に自分が感染率の高い病気にはかかっていないことを確認しておいた。この場合に服用すべき薬も数粒飲んだし、氷嚢で首や頭など脈の触れる部分を冷やした。
しかし間違いなく今朝よりも熱は上がっていると、そうドンは自覚していた。無理に動いているのだから当たり前ではあるが、それだけではなく水分がとれていないのだ。高熱を出している場合、脱水症を起こしやすいためこまめに水分補給をしなければならないのだが、ドンは口に含んだ水のほとんどを吐き出してしまっていた。つまり水すらも喉を通らない、危険な状態だった。何度も吐き出しながら何度も水を口に含み、ごく僅かな水と共に薬を無理矢理飲み込んで。空っぽの胃に薬は良くないだろうとゼリーを食べようとしたがそれも出来ない。
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