化け物が九十四匹。 ページ7
「俺も個性婚で生まれた」
「！！」
「でもオマエとは何もかも正反対だ」
「……どういう意味だ」
目を見開く轟に、俺は浅く息を吸い込む。
「俺の母さんは、個性婚だとは全く思ってなかった」
「は……？」
「オマエのとこのヤツと違って、あのクソ野郎は個性婚だってことを隠したんだよ。母さんにも、母さんの親族にも、自分の親族にもな」
「！？」
「あのクソ野郎は母さんの個性を知ってすぐ欲しくなった。でも母さんを無理矢理手に入れるほどの力はない。だから必死に母さんにアタックしたんだ。好きだ、付き合ってくれってな。欲しいのは母さんじゃなく母さんの個性のくせに」
「……」
「んで母さんはその勢いに負けて付き合い始めた。でも母さんは一緒にいる内にアイツのことを本気で好きになっちまった。あのクソ野郎が何したかは知らねェがよ」
一度開いた口はなかなか閉じない。
こんなことコイツに言う必要は一つもねェのに、だらだらと流れ出る。
轟のどんどん歪んでく表情を眺めながら、俺は続けた。
「そっからはもうアイツの思い通りだ。
自分に惚れた母さんと結婚して、優しくして、好きな振りして、幸せな家庭を作って。それで俺を産ませた。母さんと自分の個性が合わさってできた、理想の個性を持つ俺をな」
「……」
「俺の中の母さんはいつも笑ってるぜ。幸せそうな顔で、俺の名前を呼ぶんだよ」
最後は皮肉みてェに口角をつりあげながら言い放つ。
すると轟は何かを言おうと口を開いたが、俺はそれを遮った。
「これでわかっただろ。テメェと俺は全く違ェんだ」
「！」
「同じとか二度と言うんじゃねェ」
轟を思い切り睨みつけ、もういいだろと俺はまた歩き出す。
けどその直後に轟が零した言葉に、止まった。
「やっぱり同じじゃねぇか」
「！…………テメェ今まで何聞いてたんだよ。殺すぞ」
「俺は、お前が俺と同じで囚われてるって言ったんだ。過去が同じとか、そんな話はしてねぇ」
「！！」
ハッとする俺に、轟は穏やかに告げる。
「俺はさっきまで、いろんなぐちゃぐちゃしたもんに絡まって身動きがとれなくなってた」
「……」
「どんだけもがいてもそのしがらみは強くなるばかりで、自分でもどうにもできなかったんだ」
目線を下に向けながら、何かを思い出すようにぽつりぽつりと轟は話す。
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名前決まらないドン(プロフ) - 戻ってくる事を祈って待っております (2019年5月11日 13時) (
レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
あげあげ！ - 主人公のツンツンデレ具合がちょうど良すぎて死にそう(吐血) (2018年7月16日 23時) (レス) id: 94845ca325 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - うふさん» あなた様にこの小説が読み返されていることがとても幸福です！確かにみんな格好良いですよね…！ (2018年7月14日 13時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
うふ - 読み返すたび毎度思う、全キャライケメン。 (2018年7月12日 3時) (レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 餅原 葵さん» 初めまして、コメントありがとうございます！一之瀬君が人気でとても嬉しいです…！そう言っていただけて本当に有難いです！更新頑張らせていただきます！ (2018年7月3日 18時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：●龍● | 作成日時：2017年12月25日 19時
