化け物が九十三匹。 ページ6
＊
「……」
「……」
あれから数分経って。
轟の提案に頷いてしまった俺は、一定の距離を保ったまま二人並んで歩いていた。
けど轟は何も喋らない。
さっきから口を開いては閉じての繰り返しだ。
パクパクパクパク、金魚かよ。
「チッ！」
「！……」
なんなんだコイツ。
話がしてェんじゃなかったのか。
この無言の重苦しい空間にだんだん苛ついてきて、舌打ちが出る。
そしてそんな俺に気づいたのか、轟はやっと声を発した。
「……俺は、個性婚で生まれたんだ」
「！」
「クソ親父が母の親族丸め込んで、無理矢理結婚して、母の個性を手に入れて。そして俺を産んだ。
……全部、自分じゃオールマイトを超えられないと気づいたクソ親父が考えたゴミみてぇな策略さ」
個性婚。
その言葉を聞いた俺は硬直した。
あまりにも、聞き覚えがありすぎる言葉だったからだ。
「俺の記憶の中の母はいつも泣いている。
……俺の左側が醜い、と母は俺に煮え湯を浴びせた」
「……？！」
「これはそのときにできた傷だ。多分もう、一生消えないと思う」
すり、と顔の火傷の部分を手でなぞる轟。
俺はその話を聞いて、愕然とした。
同じ個性婚でもこんなに違うのか、と。
「…………なんでその話を俺にした」
「……なんでだろうな。俺もわかんねぇ」
でも多分。
轟は一旦目を伏せ、その後俺の目を見て続けた。
「似てる気がしたからだ。俺とお前が」
「…………は？」
「病院抜け出して学校来たお前の表情見て。爆豪と戦ってるお前の姿を見て。
＿＿あぁ、こいつも何かに囚われてんだなって、俺と同じなんだなって気づいた」
「っ！」
轟は前よりもいくらか柔らかくなった目で俺を見る。
俺はそれに耐えられなくなって、吐き捨てるように言った。
「違ェよ」
「……」
「俺とオマエじゃ、全然違ェ」
黙って続きを促すような目で俺を見る轟に、俺はかなり迷って、その後意を決して告げた。
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名前決まらないドン(プロフ) - 戻ってくる事を祈って待っております (2019年5月11日 13時) (
レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
あげあげ！ - 主人公のツンツンデレ具合がちょうど良すぎて死にそう(吐血) (2018年7月16日 23時) (レス) id: 94845ca325 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - うふさん» あなた様にこの小説が読み返されていることがとても幸福です！確かにみんな格好良いですよね…！ (2018年7月14日 13時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
うふ - 読み返すたび毎度思う、全キャライケメン。 (2018年7月12日 3時) (レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 餅原 葵さん» 初めまして、コメントありがとうございます！一之瀬君が人気でとても嬉しいです…！そう言っていただけて本当に有難いです！更新頑張らせていただきます！ (2018年7月3日 18時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：●龍● | 作成日時：2017年12月25日 19時
