【HP】血は水よりも濃し【アズカバンの囚人】 (ページ8)

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善意の塊は、甲斐甲斐しく他寮の怪我人の世話を焼いた。

毎日お見舞いに行ったし、廊下で見かければ荷物を持って教室まで行ってあげたし、合同授業の魔法薬学では調合を手伝ってあげた。

いつもはネビルを冷や冷やしながらお守しているので、成績の悪くないマルフォイとペアでやるのは新鮮だ。

プライドの高いマルフォイも、ユリには大人しかった。

彼女の能天気さの前には毒気を抜かれてしまうのだ。

向こうでロンとハリーがこそこそ話している。

「ヒルの汁……ほんの少しってどれくらいだ？」

「ナイフでちょっと取って。こんくらい。ネビル！それは一個だよ！」

ネビルはビク、と肩を揺らして今しがた鍋に恐る恐る入れようとしていた二つ目のネズミの脾臓を引っ込めた。

いつもならせせら笑っていたマルフォイも、今回はあきれ顔だ。

「器用だな……」

「爆発したら大変だからね」

ユリはネビルの失敗をある程度までは許容する。

だから、スネイプには毎回叱咤されているし、ネビルはいつも涙目でユリをチラチラ見るが、彼女は心を鬼にして苦笑で済ませ、授業が終わった後に慰めに行くのだ。

脾臓は入れすぎると猛毒になるので、今回は止めたというわけである。

全部、スネイプから教わったことだ。

「つまりスネイプ先生から教わったことをネビルに教えてるから、実質ネビルはスネイプ先生の愛弟子」

「弟子を取った覚えはない。黙ってやれ」

「できました師匠！」

鍋の中には、明るい黄緑色。

いつもどおり、大成功だ。

そしてスネイプはいつもどおり嫌そうな顔をして、薬にS評価をつけた。

このS評価をもらうのは、スリザリン生も含めていつもユリだけだった。

次の日、「闇の魔術に対する防衛術」の最初の授業だ。

ちょっと話しただけだけど、優しそうないい先生だった。

そう言うと、ロンが顔を顰めて言う。

「アイツに比べりゃ誰だって名先生さ」

ルーピン先生は、”アイツ”と比べたりしなくても名先生だった。

ボガートの授業は今までのどの授業よりも楽しかった。

みんな自分の怖いものを笑って、笑って……最後には撃退してしまった。

教室のみんなで協力した結果だ。

唯一、ユリの前に出てきたときに、ボガートは何故か洋箪笥に引っ込んでしまったけれど。

シェーマスが「まね妖怪も、グリンデルバルド様には負けるぜ」と言ってこの奇怪な事態を和ませてくれたので、そのことについて疑問に思う者はいなかった。

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