【HP】血は水よりも濃し【アズカバンの囚人】 (ページ36)

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「今日この学校を出る。けれど、またいつかきっと会えるだろう。君が、そう望んでくれるなら」

「の、のぞみますッ」

べしょべしょに泣きながらそう言った。

ルーピンは変な言い回しが面白かったのか、くすりと笑ってベージュのハンカチをユリの頬にそっとあてた。

ユリは左手でそれを受け取って、「ぁりがどうごさいマすッ……！」と嗚咽交じりに言う。

「再会の日に、それを返してくれるかい？」

「もちロンでず……」

ユリはハンカチを膝に置いて差し出された手と握手を交わす。

これが最後ではないのだからと、精一杯の笑顔を顔に浮かべる。

ルーピンはそれに勇気づけられたように笑みを返した。

ユリは彼が出て行くのを、見えなくなるまで見送った。

翌朝。

無事退院したユリは、その足で地下へ向かっていた。

こんこんこん、と三回ノックして、部屋の主を待つ。

バタン！と乱暴にドアが開き、彼と対面した。

ユリは早鐘を打つ心臓を無視して、ちいこく頭を下げる。

「あの、一昨日、ありがとうございました」

「……」

「あの、助けてもらって」

ドア枠を挟んで向き合いながらそう言った。

スネイプは不愉快そうに眉間に寄せられていた皴を徐々に緩め、そしてふ、と息をついていった。

「お前がいなければ今頃食われて死んでいた」

「……え、」

彼はちら、とユリの右腕を見て、部屋の中に踵を返した。

すぐに出てきて、ユリに手に持ってきたものを差し出す。

「透明マント」だった。

すっかり失念していた。

襲われたときに落としてしまったのを、彼が拾ってくれたのだろう。

ユリはあんまりびっくりして、しぱしぱと瞬きしてスネイプを見つめた。

だって、こんなの、スネイプなら絶対に没収する品物だ。

その証拠に、彼の薄い唇の端の筋肉がヒクヒク不快な痙攣を起こし、不本意を隠そうともしない。

しかし、彼はそれを差し出していた。

「あ、りがとうございます」

掠れた声で言ってマントを受け取る。

それを確認して、スネイプはバタン、とドアを閉めてしまった。

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