【HP】血は水よりも濃し【アズカバンの囚人】 (ページ35)

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随分長いこと眠っていたようで、ユリが目を覚ますともう日が高く昇っていた。

城にはほとんどだれもいない。

みんな何も知らず、試験後のワクワクホグズミードに出払っているのだ。

四人の中で、ユリだけ退院を許されず、他の三人がひそひそ声で昨晩の大冒険を語ってくれた。

シリウスとバックビークを『逆転時計』をうまく使って逃がしたらしい。

やっぱり無茶をするな、と思ったが、ユリは「すごいね」とだけ言っておいた。

自分も相当の無茶をしたとわかっているからだ。

たぶん、昨夜はスネイプが助けてくれたのだろう。

ギリギリで目を覚ましたのだ。

もしあと数瞬遅れていたら、自分は死んでいた。

あとでお礼を言いに行こう。

やがてマダム・ポンフリーがやってきて、三人もさっきまで入院していたのに、身体に障りますと言って彼らを追い出してしまった。

ユリは暇になったが、すぐに新しい客が来た。

「ルーピン先生」

ユリはキラキラ笑って彼を出迎えた。

ルーピンの微笑みはそれとは対照的に、大分草臥れている。

「昨日は大丈夫でしたか」

ユリが小さくそう言うと、彼は目を瞬かせた。

そして、困ったように笑う。

「君は……優しいな。危険な目にあわせたというのに」

「気にしてません！先生のせいじゃないし、どうして、誰がそんな……」

「セブルスが今朝一番に怒鳴りこんできたんだ。そうだね、あれは……"キレ"てたよ」

スネイプの名前にユリの方はビク、と跳ねたが、ルーピンは気づかないようだった。

彼は微笑みを潜めて、包帯でぐるぐる巻きにされたユリの右腕に目を落とす。

「本当に、すまなかったね」

「謝らないでくださいってば」

「いいや、謝らせてほしい。危険な目にあわせた。私のせいだ。不注意だ……」

苦し気に呟いて、彼は教師を辞めたのだと言った。

人狼であることが学校中にバレたから。

ユリはびっくりして引き留め文句を思いつく限りまくし立てたが、首をゆっくり横に振るだけ。

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