【HP】血は水よりも濃し【アズカバンの囚人】 (ページ34)

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突然校庭にぼんやりとした影が落ちた。

一行は月明りを浴びていた。

ユリには、何が起きたかすぐにはわからなかった。

ただ、たった今ルーピンがいた場所で黒い影が大きくなっていくのを見つめて。

「どうしましょう……あの薬を今夜飲んでないわ！危険よ！」

ハーマイオニーが絶句した。

「逃げろ」

シリウスが低い声で言った。

「逃げろ！早く！」

ユリは逃げることができなかった。

スネイプが後ろでぷかぷか気絶したままだから。

ハリーとハーマイオニーもそうだ。

ロンがペティグリューとルーピンに繋がれたままだった。

置いていくなんてできない。

けれど、ペティグリュー、ルーピン、シリウスの三匹の動物が散り散りに去ったあとで、ユリはちら、とロンを見たハリーに言った。

「ロンと先生は私が何とかするよ」

あてがあるわけではない。

それでもハリーとハーマイオニーはユリを信じて、駆けだす。

「モビリコーパス」

つい最近「呪文学」で習った魔法をかけて、ロンを浮かせた。

彼は先ほどペティグリューに攻撃を受けて気を失っているのだ。

脚の骨も折れているようで、包帯が巻かれている。

うんしょと立ち上がり、雑草を踏み分ける。

数歩動いたところで、はやくも。

恐ろしい唸り声がした。

ルーピンが戻ってきた！

ユリが振り向くと、森の方から疾駆してくる大きな影。

ユリは手当たり次第に呪文を放った。

なるべく、先生を傷つけないもの。

杖腕に握られ今使っているのはスネイプの杖で、自然彼への浮遊呪文は解除され、その身体は地面に横たわっている。

しかし、二人を背に隠しながら人狼とやり合うのも限界があって。

獣は徐々に、そして確実に、彼らに近づいていた。

「ギャッ」

そしてついに、その爪が彼女に届き、杖は弾き飛ばされる。

右腕から流れ出た血が、狼をさらに誘った。

ユリは最後の懇願を泣き叫ぶ。

「先生！ルーピン先生！」

意識が朦朧としている。

多分岩に頭を打ったのだ。

これは、もう……。

「先生……！」

黒が翻った。

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