【HP】血は水よりも濃し【アズカバンの囚人】 (ページ33)

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「ユリ！？」

ハリーが驚いて声をあげる。

知り合いのようだと察して、シリウス・ブラックは咄嗟にユリに向けた杖を下ろした。

両手を広げてスネイプを背にしながら、ユリは困って三人と、ルーピンを見た。

「なぜここに？」

ルーピンが見開いていた目を細め、険しい顔で言う。

「ロンが『暴れ柳』の中に引きずり込まれたのが見えたので……。最初はルーピン先生を呼びに行こうと思ったんです。そしたら、スネイプ先生がいたから」

困惑のまま説明したユリに、今度はハリーたちが説明をする番だった。

ややこしいが過ぎる話をまとめると、結局シリウス・ブラックは人を殺しておらず、真犯人はそこの、ネズミ顔のピーター・ペティグリューだったというわけだ。

彼はスキャバーズの正体だった。

ようやく、ジョン・ドゥやクルックシャンクスがあのネズミを突っつきまわしていた理由を理解する。

「あのー……ブラックさん？」

ユリの警戒は漸く溶けて、そう話しかけた彼女にシリウスは飛び上がらんばかりに驚いた。

こんなに丁寧に話しかけられたのはいつぶりだろう。

「あの、スネイプ先生、私が運びます」

「いや、いいんだ」

「いや、お手を煩わせるわけには」

シリウスを疑っているわけではなかった。

ただ、少し、なんというべきか……悪意が感じられたのだ。

結局ユリはほとんど取り上げるようにしてシリウスからスネイプの黒い杖を受け取り、彼のガクリと垂れた頭が低い天井にぶつからないように気をつけながら歩いた。

彼が気を失っているのは、三人のせいらしい。

ハリーとロンとハーマイオニーが、同時に武装解除の呪文をスネイプに放ったそうなのだ。

ユリは思わず苦笑いした。

スネイプがそれを覚えていたら、ブチ切れるに違いない。

一行は柳の穴から這い出した。

「ちょっとでも変なまねをしてみろ、ピーター」

前の方で、ルーピンが脅すように言った。

ペティグリューの胸に、ルーピンの杖が横から突き付けられていた。

みんな無言でひたすら校庭を歩いた。

窓の灯が徐々に大きくなってきた。

ユリは顔を上げてそちらを見やる。

ロンの姿を発見したのはあの窓だろうか。

いや、あっちかも。

そんなことを思案していると、そのとき。

雲が切れた。

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