【HP】血は水よりも濃し【アズカバンの囚人】 (ページ28)

今日:7 hit、昨日:110 hit、合計:163,761 hit

ページページ28

.

「あっ」

声の主はユリである。

彼女もそろそろしびれを切らして菓子に手を伸ばしていたのだ。

考えてみればスネイプはどっちが先に食べるとかそんな些細なことを求めてくる人ではない。

むしろきっと食べきってほしいと思っているに違いないと、そう思った。

よって、二人が皿に手を伸ばし、どうなるか。

指先が、ほんのわずか触れた。

ユリは素早く手を引っ込めたが、お互い何も言わなかった。

謝罪もおかしいし。

彼女はもう一度バターサンドに手を伸ばし、ひとつ頬張り。

そして紅茶を飲み干すと、急にガタン！と立ち上がった。

用事を思い出した、と言って。

勝手に押しかけてきて勝手に用事を思い出し、勝手に帰ったユリを、スネイプは嵐の過ぎたような面持ちで見送った。

杖を一振りし、お茶会の残骸を片付ける。

一方のユリはモチロン用事などなく、グリフィンドールの談話室に駆け込んでいた。

そして本に埋もれるハーマイオニーに突撃し、唐突に言う。

「ハーマイオニーどうしよう！スネイプ先生のこと好きになっちゃった」

「……前から知ってたわ」

ハーマイオニーは怪訝な顔をユリに向ける。

今更なことを今更言われて、わけがわからない。

でも、ユリはちがうちがうと首を横に振った。

そして自身も信じられないという顔で、もう一度言った。

「スネイプ先生のこと、好きになっちゃった！」

ハーマイオニーはポカンとし。

意味を理解して暫し。

寮に驚きの叫びが響き渡った。

.