【HP】血は水よりも濃し【アズカバンの囚人】 (ページ26)

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「……約束は今日ではないはずだが？」

「うん。急にごめんなさい」

約束、という言葉にきゅんとしながら、ユリはにへらと笑って答える。

丸く切られた何も書かれていない羊皮紙を取り出した。

「オーロラ先生、やっぱりどこにいらっしゃるかわからないんです。スネイプ先生お願いします。天文学教えてください！」

「……」

「それとも、誰か天文学得意な先生知ってますか」

スネイプは眉を顰めてユリを見、数秒後無言で部屋の中に引っ込んだ。

扉は開けたまま。

ユリは喜んでその中に滑り込み、後ろ手にドアを閉めた。

「星図が書けないんです」

「……星図が書けずに天文学の何ができるのだ？」

スネイプは流石に困惑して言った。

彼は「魔法薬学」での極めて優秀なユリ・グリンデルバルドしか知らないから。

まあそれにしても、ユリはどうやって一年次の学年末試験をパスしたのだと言いたくなるほど「天文学」が苦手だった。

勉強をしていないわけではないのだ。

相性が悪いというだけ。

それでも、苦手な教科というだけで集中力は削がれるもので…。

「先生は苦手な科目とかあったんですか？」

「黙ってやれ」

開始15分のことである。

ユリにしては粘った方だった。

いつも、「天文学」の課題は5分黙ってやれば長い方だから。

「良いか。20時を描けと言われている。この星はシリウスだ。ではこの星は？」

「デネブ」

「何故？」

「？なぜ……？」

本当に困った顔でユリがこちらを見るので、スネイプは額に手を当てて諦念の息をついた。

しかしこのまま放り出しては落第点を取りかねないので、仕方なく杖を振り茶の用意を始める。

長いことお飾りだった白のティーカップが、勇んで飛び出しカチャカチャと嬉しそうに音を立てた。

彼はいつも隣の澄ました青いヤツしか使わないのだ。

その間にも、ユリはうんうん唸って星座表とにらめっこしている。

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