【HP】血は水よりも濃し【アズカバンの囚人】 (ページ20)

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「もしかしてご飯食べてないんです？」

「トレローニー先生が、十三人での食事は不吉だと仰る」

ツンとすました顔で言われた。

意外と会話が続く。

ユリは嬉しくて、戯れに自分の杖を取った。

スネイプは怪訝に眉を顰めるも、ただ生徒のするに任せる。

「エクスペクト・パトローナム！」

彼は目を見開いた。

対して、ユリは嬉しそうに笑う。

「やっぱり！今ならできると思ったんです」

銀色のコウモリが薄暗い医務室にはばたく。

それも二匹。

守護霊の出現は、同種であっても、複数になることはない。

少なくとも、文献上に前例が示されていない。

この少女の、たまに垣間見せる魔法の才能には目を見張るものがあった。

まだ練習は数回しか行っていない。

流石は、ゲラート・グリンデルバルドの血筋と言ったところか……。

それに彼女は、スネイプの想像していたよりずっと、幸せのかたまりなのだ。

ともあれ、スネイプはユリの杖を下げさせた。

守護霊の呪文は、ましてや二体ともなれば、魔力消費は他の呪文とは比較にならない。

ユリは嬉しそうに言った。

「片っぽ、スネイプ先生に似てた」

「……」

「もう片っぽはなんだろ」

無視とも言うが、彼は否定をしなかった。

言われてみれば、耳の垂れた方のコウモリは、雰囲気を感じないとも言い切れない。

しかしそれは言わずにおいた。

「ね、大きい方。あんまり普通のコウモリには見えなかったですよね」

「……ヴァンパイア」

「え？」

「あれはヴァンパイアの変化したコウモリだ」

「へえ……なんで？」

「知らん」

知る由もない。

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