【HP】血は水よりも濃し【アズカバンの囚人】 (ページ19)

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「スネイプせんせぇ」

にへら、と笑う。

きっとお見舞いに来てくれたのだろう。

片手にルーピンに渡していたのと同じようなゴブレットを持っている。

「熱は」

「今夜は測ってないです」

あわよくば彼自ら額に触れて確認してくれるかな、とバカみたいに考えるが、そうもいかず。

ピ、と杖先をユリのこめかみに当てて、「101度1分…」と呟いたスネイプに、「魔法って便利だなあ」と少しガッカリした。

彼は手に持ったゴブレットをそっとユリに差し出す。

冷たい指先がほんの少し触れて、受け取ったユリは少し不安にスネイプを見上げた。

「……解熱剤だ」

「なに味？」

「……」

スネイプは眉間に皴を寄せてはやく飲めと言わんばかりの視線を病人に向けている。

ユリは恐る恐る口をつけて……目を見開いて。

「！りんご」

火照った身体に、冷たいリンゴ味がよく沁みる。

熱がすぐに下がっていっている気がする。

節々の痛みも、頭の痛みも治まっていく。

彼の調合なのだから、当たり前か。

味は、先生が気を利かせてくれたのかな。

それとも、そういうものなのかしら。

考えているうちにあっという間に飲み干して、ゴブレットをスネイプに返した。

だいぶ元気になった気がする。

と思ったら、急にお腹が空いてきた。

クリスマスのごちそう、と思い出して、スネイプを見上げる。

「先生はパーティー行かないんですか？」

すると、彼は無言で杖を上げ、机の上で大きく振った。

「わ！」

ユリの瞳が輝く。

ホグワーツのパーティーとまったく同じごちそうが、医務室の小さなテーブルに所狭しと並んだ。

スネイプが、ここまで気を回してくれるなんて。

「先生、今年すごい心配してくれますね！」

「ダンブルドアの頼みだ。他意はない」

「うれしいです」

嬉しいわりにまるで言葉の聞こえていないユリにスネイプは眉間の皺を深めたが、そのままベッドのそばの椅子に腰掛けた。

「あ！居てくれるんですか！」

「……」

「ダンブルドア先生の頼みですね！了解です」

訂正のため口を開きかけたスネイプを制して、悪戯っぽく笑う。

そして、ローストチキンを頬張った。

スネイプは座ったまま、それをじっと見ている。

一緒に食べるつもりはないらしいことには気づいていたが、ユリは構わず皿に乗ったミートローフを差し出した。

跳ねのけられてもダル絡みしてやろうと考えていたが、あっさり受け取られて拍子抜けする。

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