【HP】血は水よりも濃し【アズカバンの囚人】 (ページ16)

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いましがたプールから出てきたばかりのような姿でユリはスネイプの研究室の戸を叩いた。

ハリーがクィディッチの試合で箒から二十メートル近く落ち、その見舞いに行った後のことである。

スネイプはドアこそ開けてやったものの、そのびしょ濡れの姿を見るなり顔を思い切り顰めて部屋の奥へ引っ込んだ。

そして出てきたかと思うと、冷たい廊下で突っ立っているユリにタオルを投げつける。

ユリはもごもご礼を言って濡れた身体を拭いた。

暖炉に火を焚いている部屋は、冷たい態度とは裏腹に暖かかった。

スネイプはもう流石に理由も聞かずに部屋を閉め出すことはしない。

彼女は研究室の常連なのだ。

「ハリーが、吸魂鬼に襲われたんです。クィディッチの試合中ですよ」

ユリは憤慨した様子で言った。

スネイプは試合観戦に行っていないので概要を今初めて知ったが、ピクリとも表情を動かさない。

むしろ何故ユリがここに来たのかと、その理由を急かすように彼女を睨みつけていた。

ユリもそれに気づいて、髪を拭いていた手を止める。

「あ。でね、吸魂鬼倒す魔法ってないのかなって、聞きに来たんです」

「用件はそれだけか？」

「え、うん。それだけ……？」

「それならば我輩より闇の魔術に対する防衛術の教授の方が適任だと、何故考えることができない？」

「そうなんですか？先生なら知ってると思いました」

昨日の今日での最大の皮肉に、ユリはケロッと答える。

素直なキラキラの瞳に、流石にスネイプは面食らった。

「それにね、私も汽車の中で吸魂鬼出たとき、ハリーほどじゃないけど、ちょっと意識飛んじゃって。自衛です」

その理由は、スネイプに一考の余地を与えた。

てっきり、”ともだち”を助けるためなどと言い出すものと思っていたから。

やがてスネイプは、薄い唇をわずかに開いた。

「非常に高度な魔法である。OWL資格をはるかに超える……」

「”ふくろう”ってなんですか？」

「一回黙って聞け」

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