【HP】血は水よりも濃し【アズカバンの囚人】 (ページ12)

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今年のハロウィーンは、何事もなく終わりそうだった。

でもまだ油断はできない。

宴会は無事に始まったが、事件が起きるのはいつだって宴の途中だから。

大広間には、何百ものくり抜きかぼちゃに蝋燭が点り、生きたこうもりが群がり飛んでいた。

四人はそれらに囲まれ、すばらしい食事を前にしてドキドキワクワクしていたが、その途中で、一羽のカラスがすい、と飛んでくる。

ユリのジョン・ドゥだ。

ハロウィーンのウキウキに引き寄せられたかな、と思ってロンが差し出したパンプキンパイをパクッと食べると、その嘴を開いた。

「相変わらず何言ってるかわからないなあ」

ロンが呆れたように言ったが、ユリは立ち上がった。

もう聞きなれてしまった日本語の中に、知った名前を見つけたからだ。

「私のぶんの糖蜜ヌガー取っといて！」

そう言って、ユリはジョン・ドゥの後を追って大広間を出た。

階段をいくつも登って辿り着いた先は、いつも人気のないふくろう小屋の塔。

中を覗いて見えた人影に、ユリはパッと表情を明るくして笑った。

「お、来たな。ごくろうさん」

窓際に腰かけてジョン・ドゥの頬を撫でる美しい少年。

ユリの幼馴染の、双子の兄貴だ。

マァ幼馴染と言っても、ユリは彼の年齢を知らない。

物心ついた時から風貌が変わらないのだ。

もしかすると妖怪なのかもしれないが、アジアンは若く見えると言うし、そんなに気にしていない。

「なんでいるの？」

「ヨーゼフさんに用事あってな。ついでに見に来たんだよ」

彼はユリの頭をわしゃ！と撫でる。

彼の双子の妹がクソ生意気なので、素直なユリは昔から妹のように可愛がられていたし、彼を本当の兄のように慕っていた。

ユリはてれてれ笑いながら、ローブのポケットから持ってきたお菓子を取り出す。

「はい。あげる」

「ありがとう」

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