【HP】血は水よりも濃し【アズカバンの囚人】 (ページ11)

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「さて。どこがわからない？」

「何がわかればこの問題が解けるのか……」

その答えにルーピンは苦笑した。

これは手強い。

興味深い姓を持つ彼女に関して、「魔法薬学」と「薬草学」の成績が優秀ということしか聞いていなかったので、意外と普通の生徒のようだと肩の力が抜ける感じがする。

根気よく教えてやっていると、ふとユリが顔を上げて思い出したように言った。

「そういえば、ボガートはなんで箪笥に引っ込んじゃったんでしょう？」

防衛術の最初の授業で引っかかっていたことだった。

ルーピンは目をぱちくりさせたあと、ああ、と声を漏らす。

「ユリ、ボガートはまね妖怪だ。人が恐れるものならなんだってその姿になる。でも、ひとつだけなれないものがあるんだ。何だと思う？」

「？ヴォルデモートですか？」

「違う」

ゆっくり首を振った。

「君が恐れているのは、死そのものだ」

「？とうさんが死ぬとかってことですか」

「ううん」

もうルーピンは笑っていない。

真剣に、諭すように、安心させるように、そんな声音でユリに語り掛ける。

「実体として死が出てくれば、それはその人個人の死を恐れていることになる。でもユリのは違う。君はこの世にいる全員、極端に言えば、ヴォルデモートでさえ死ぬのを怖がっているね。ボガートがそれを表すためには、自分を殺さなけらばならない。だから、君の前から逃げ出したんだ」

なんだかよくわからない。

ユリがぽけっとしているのに気づいて、ルーピンはやっと笑みを取り戻した。

「難しかったかな」

「はあ……」

ふ、と笑う。

天文学の宿題に視線を戻した。

この子に何があったかは知らないけれど、まだ、そのままでいい。

死を知るには、まだ早い。

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