【HP】血は水よりも濃し【アズカバンの囚人】 (ページ1)

今日:34 hit、昨日:29 hit、合計:163,678 hit

my little lily ページ1

.

「じいちゃん」

ユリ、ゲラート・グリンデルバルドの孫娘は、半年に一度のひいおじいちゃんの顔を見ると花が咲くように笑う。

彼女の名前はリリーの意味だそうだが、その純粋無垢に似合うべくつけられた名前だと、グリンデルバルドは思う。

1993年の夏、爺と孫は再び鉄格子越しに対面した。

8月も末の昼間のことであるが、オーストリアの山中にあるヌルメンガード城は長袖でも涼しい。

「半袖か。寒かろうに」

「ううん大丈夫。このままロンドンに行くんだ」

「そうか。もうそんな時期だな」

当然ヌルメンガードには、カレンダーはおろか時計もない。

この気の狂いそうな空間でグリンデルバルドが己を保っていられるのは、本人の精神力と加えて、まさしくユリの存在のおかげなのであった。

面会できるのは一回30分で、ユリが30分喋り通すことが多い。

グリンデルバルドはいつも、それを優しい相槌で聞いているのみだった。

「あのさ、秘密の部屋開けたのヴォルデモートだった」

「なんだと？」

「なんかあ、日記に記憶残しとく魔法かけてたんだって。よくわかんないけど」

それにしても、ホグワーツに入ってからのユリは刺激的な話をすることが多い。

あのグリンデルバルドでさえも目を見張るような物語だ。

「それでね、そのときじいちゃんのおまじないが私のこと守ってくれたの。バチン！って」

にこにこ笑うユリに口ではよかったな、と返したが、内心かなり眉を顰めた。

ホグワーツはダームストラングよりはるかにマシで安全だと思っていたが、どうもそうではないらしい。

むしろダームストラングより悪いような…？

さっきユリが嬉々として見せてきた指定の教科書一覧にも、『怪物的な怪物の本』などという物騒な名前があったし。

スキャマンダーの著書で良かろうに。

.