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「君、絶望的にジャンケンが弱いんだね」
「ウン、私も今初めて知った……」
ユリはドラゴン救出隊に引き続き、賢者の石救出隊にも落選した。
ハリーの「透明マント」に入れるのが三人でギリギリだったため、ここは平等にジャンケンで、ということになったのだが。
ロンとハーマイオニーがペーパー、ユリがロック。
ものの見事に一人一発負けを喫した彼女は、危険地に赴くのを免れたというのにオモチャを取り上げられたみたいな落ち込み方をしていた。
友人といるのが好きなユリは、もちろん怖いのもそうだけれど、それ以上に勇んでいたのだ。
「賢者の石」を、この世界の窮地を、ハリーたちとともに守るのを、マァ不謹慎で語弊を招く言い方をすれば、楽しみにしていた、のに。
ユリは喜ぶことができず、かと言って落ち込むのもおかしく思われて、微妙な笑い方をして夜を待った。
固まったネビルを床に転がして、廊下に出る直前、ユリはハリーたちを呼び止めた。
首からペンダントを外して、ハリーにかける。
彼はびっくりして、それを返そうと手をかけたが、ユリはそれをとどめた。
「持ってってほしいんだ」
「なんで……君の大切なものなんだろう」
「うん。じいちゃんがおまじないをかけてくれたんだって。史上最強の、魔法使いのおまじない。一応”闇の”だけど……きっと、あの人。ヴォルデモートだって勝てやしないよ」
実はこの「おまじない」はユリにしか効かないものだったが、それを知る由もない彼女は本当に三人が心配で心配で、その宝物を預けたのだった。
ハリーもユリも耐えきれず、お互いぶつかるようにハグをする。
そこにロンとハーマイオニーも加わって、四人抱き合いながらユリが呟いた。
「気をつけて。どうか無事で」
四人は離れて、ハリーが少し笑ってユリに言う。
「ユリも。君の敵はフィルチだ」
ユリは肩を竦めた。
そう、安全かと思われた彼女にも任務がある。
ユリはこれから管理人フィルチにミセス・ノリスに、その他大勢の見回りの先生の目をかいくぐってふくろう小屋まで行き、ダンブルドア宛てに伝令を送らなければならない。
一刻も早く。
四人は頷き合う。
他の三人が透明マントを被ったのを確認して、ユリは寮の出口を押した。
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にはろ(プロフ) - 理緒さん» ご意見ありがとうございます!修正しました。今後ユリという名前に関する記述が少し出てくるかと思いますが、無視していただければ大丈夫です。 (2022年4月19日 21時) (レス) id: f8ad011ce4 (このIDを非表示/違反報告)
理緒(プロフ) - 名前ってユリになってるんですがリノを使いたいのですが変えれませんか? (2022年4月19日 10時) (レス) id: 946438c0c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みや。 | 作成日時:2022年1月24日 13時