ページ ページ21
.
暫しの沈黙があった。
ユリが耐えきれなくなり「あっ、やっぱりいいです〜」と言う前に、スネイプが唇をほとんど動かさずに言った。
「ついてこい」
それにユリはびっくりして…そして、「あ、はい」と間抜けな声を出して、さっさと歩いていくスネイプに付いて地下まで下りた。
そこは、スネイプの自室のようだった。
するわけもないのに、「余計なことはするな」と釘を刺されてから中に入る。
物は多いが整理されている印象を受けた。
スネイプはもう一つドアを開け、奥へ入っていく。
そこには地下牢にあるような調合用の机と『ベゾアール石』なんかと書かれた引き出しがたくさん詰まった棚と…たくさんの本があった。
魔法薬学好きが好きなものを集めたような場所だ。
ユリは呆気に取られていたが、最初の授業のようにスネイプの咳払いで我に返った。
「君は周りを見る目が足りないようだ」
彼は呼吸をするごとに嫌味を言わないと死ぬ病気にかかっているが、ユリは気にせず差し出された本を大事に受け取る。
それはたしかに、ユリが求めていた本だった。
ユリは口を開け、本とスネイプの間で何度か視線を行ったり来たりさせたのち、呟くように言った。
「お借りできるんですか」
スネイプは顰め面で返す。
「……休暇明け最初の授業で返しに来い」
それで、スネイプはユリを追い立てて自室から出した。
彼女は慌ててチョコレートと紅茶を取り出し、差し出す。
「あっあのこれ！一日はやいんですが」
スネイプが固まった。
ユリは流石に出過ぎたかと思って心配に問う。
「チョコレートお嫌いでしたか」
それとも私が嫌いですか、そう言う前にスネイプは箱をひったくるようにして受け取った。
そうして礼も言わず、バタンと目の前で扉が閉まる。
ユリはまた呆気に取られて扉を見つめ、ありがとうございます、とスネイプに聞こえるように大きな声で言った。
ふう、とひとつ息をつく。
今のを全部夢だと思うことにしたのだ。
だから、ハリーとロンにはあったことを何も言わなかった。
チェスをしている二人の間に座り、ふと思う。
やっぱり見てくれは好きなんだよな、と。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 591人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にはろ(プロフ) - 理緒さん» ご意見ありがとうございます！修正しました。今後ユリという名前に関する記述が少し出てくるかと思いますが、無視していただければ大丈夫です。 (2022年4月19日 21時) (
レス) id: f8ad011ce4 (このIDを非表示/違反報告)
理緒(プロフ) - 名前ってユリになってるんですがリノを使いたいのですが変えれませんか？ (2022年4月19日 10時) (レス) id: 946438c0c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みや。 | 作成日時：2022年1月24日 13時
