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鬼殺隊にバレる前に早く逃げなきゃならなかった。
無惨が生きてるのがバレたら、自分たちも、向こうさんだって不幸になるんだから。
だから父子三人は夜の森の中をさっさと逃げた。
やがて無惨の変化が解けると、適当な廃屋に入って無惨を寝かせた。
呼吸が浅い。
血も止まらない。
朔久が無惨の身体に噛みつき血を吸い出す。
そこに、Aが人差し指を突っ込んで補填した。
無惨にAの血液ではすぐに押し負けてしまうので、こう面倒で危険な作業をしなければならないというわけであった。
案外うまくいくらしい。
途中朔久は妹を心配して言ってやった。
「無理すんな。血足りなくなったらすぐ止めろよ」
するとAは心なしか青ざめた顔で言う。
「ブタの肝臓とホウレンソウを毎日食べていたので大丈夫です」
ああ、と思い出した。
そういえばコイツ、狂ったようにホウレンソウを食っていたなと。
それを負担にならぬよう続けると、三日やそこらで無惨の血は完全に入れ替わった。
そして、双子は昼は洞窟の中や空き家で無惨の世話をしてやった。
寺やカミサマを祀った神社では寝心地が良くないようだったので、あまり入れなかった。
目的地は決まっていた。
九尾の社である。
たしか下野のあたりにあると言っていたような。
今の栃木県のあたりである。
とにかく九尾を祀っているという神社を虱潰しにあたるしかないなと話し合った。
無惨はずっと眠っているので、嫌な顔はされなかった。
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作者名:にはろ | 作成日時:2021年5月24日 16時