【HQ】ゴミ溜め四人衆、見参。【稲荷崎】

ページ ページ8

.

宮侑は椅子の上に立った。

宮治は椅子から崩れ落ちて頭を抱えた。

二人だけずっと喉から唸り声を絞り出している。


ちょっと落ち着いてきた角名が「うるさい」と一喝した。


「え、何、それ。いつから？てか何情報？どこ情報？」

「2学期の終業式から。春高の応援中に長野さん(1年7組・吹奏楽部フルートパート・南さんのいつメンの一人)に聞いた。その後音間違えまくったよね」



それからしばらくこのゴミ溜め場は静かになった。

全員が頭を抱え、全員がもそもそと残りの飯を食い、全員の目が死んでいた。


そして、12時35分。

5限の開始まで15分を切った頃だった。





「食堂行ったらおるかな」





呟いたのは金髪だった。

その言葉に角名がはっと顔を上げる。

それだ、というように。性格の悪い。


「……え、行く？」

「行くか」

「行こうぜ行こうぜ」



もう吹っ切れた。

全員立ち上がり、弁当箱やビニール袋を廊下に置き去りにして2階へと階段を駆け下りる。


根拠は何もなかった。

ただいる気がするという直感だけ。



入り口の陰からのぞいた先に。





「やっぱりおった」

「笑ろてはる！北さん笑ろてはるよ」

「ウワー」

「すっご……」





隣同士で座り、幼馴染だからかやっぱりどっちも出で立ちが美しくて、それでいて青春(アオハル)をまき散らしている。

南さんの方が少し姿勢を崩して、北さんと顔を合わせて笑い合っていた。




「……帰ろか」

「さっさと着替えよ」

「あ、次体育？」

「持久走」




最早持久走になんの感情も湧かなかった。



なんだかよくわからないため息がその日一日中止まらなかった。





.

次ページ→←新学期有象無象

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す