ヘアピン。 ページ46
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現代文と古典のテストを見比べて、現代文がままならないうちに古典をやるのもどうかと思ったが、昨日現代文はみっちりやったと言うのでほんとかよとか思いながら古典をやっている。
真に不本意ながら北一三年間、中一の時には国見金田一とも面倒は見ていたのでちょっと懐かしい。
ちなみに「おかきくカルテット」とかいうすげー不名誉な括りがあったらしい。
ちょっと嫌だった。
「リベンジならず、とか聞いたことある？」
「おう」
「どういう意味かわかってる？」
「リベンジできなかったってことだろ」
答えたあと、ドヤ顔の影山。
えらいでちゅね、あんよがじょうず。
「で、その"ず"が、できないっていう意味と同じなの」
「！そうか」
汚い字でノートにリベンジならず、と書いてその隣にまた印をつけている。
昔からバレー日誌つけてるからか、ノートまとめるのはそこまで下手じゃないんだよな。
「この、じはつ？は」
「自発のる、ね。オリンピックでの活躍が思い出されます、ってやつ」
「？どれだ」
活やくが思いだされる、と書いてペンが止まる。
「これ。この、れ」
活用表を指し示しながら影山のノートも指さす。そのまま説明を続けながら垂れてきた髪を耳にかけた。
すると影山が目敏くそれを見つけて、というかもっと早く気づくべきなんだけど、言った。
「……髪」
「ん？あ、ゴム切れちゃって」
捨てた、と答えると、影山がズボンのポケットを漁り出した。
手を止めて見てみると、取り出したのはかわいらしい猫のヘアピン。
「え、どうしたのそれ」
「この前美羽に遊ばれた」
「お姉さんに？」
大丈夫だよ、と遠慮しようとすると、言葉を発する前に髪に優しい感触。
パチン、と柔らかい衝撃とともに、目の前にあったシャツの白が離れていく。
「これでいいだろ」
何食わぬ顔でシャーペンを握り直す影山に、少々どもりながら言った。
「あ、あありがとう」
「おう……顔赤くねえか」
「赤くねえです」
「？そうか」
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作者名：にはろ | 作成日時：2020年3月5日 18時
