恋人はあなた。-９-

3 二階堂side ページ3

｢今週末も戻ってこれないんすか？｣


｢どうだろな〜…てか、１回もそっち戻れないとか普通にあり得ねーよな｣




ミツさんが研修に行ってる間、代わりに引き継いでた仕事のことで報告があり、九州支社の人達と飲み会中のミツさんに電話してた。

どうやら向こうの課長がかなりの酒豪らしく、飲むと話も時間も長くてマジで疲れるわ〜とグチってた。








｢Aさんとは…｣


｢え？A？｣


｢あ、いや…ちゃんと連絡取ってます？寝落ちしちゃって、LINEもろくにできてないとか言ってたから｣


｢俺もね、ちょっとは余裕出てきたから最近は電話もしてんの。A、何か言ってた？｣


｢いや、そういうわけじゃ…全然会えてないからきっと寂しい…｣




俺が言い終わる前に、電話の向こうで、｢北山先輩！｣と呼ぶ声がした。




今の声…吉川さん？

いや、それにしては少し声が高かったような…



｢わリーわリー、すぐ行くわっ。…ゴメン二階堂、次も付き合わなくちゃいけねーから行くわ。データは明日確認しとくから、じゃなっ｣









はぁ〜…やっぱり言えない。

俺は人もまばらになった事務所で、ため息をついた。



俺は、葵さんにAさんのひったくり事件のことを聞いた。

きっかけは、会社の最寄り駅近くで、藤ヶ谷さんの車に乗るAさんを見かけたことが始まりだった。

休日出勤してた俺は、帰りに二人の姿を目撃した。

場所的に、Aさんはおそらくミツさんちに行ってたんだと思う。

けど、何で…？

何となく気にはなったけど、いつの間にかその事は忘れてた。




で、おととい。

俺は、Aさんちの最寄り駅近くに引っ越した友達の家に行ってた。

そしてその帰り、駅から自転車を押して出てくるAさんの姿を見かけた。

声をかけようと思ったら、そこには玉森くんの姿もあった。

えっ？と思ったのも束の間、玉森くんが運転する自転車の後ろにAさんは乗って、二人は消えていった。





わざわざここまで送ってもらってんの？

てか、この前の藤ヶ谷さんといい…どうなってんの？




俺は昨日葵さんに会った時に、このことを話した。

最初は俺の話を流して聞いてた葵さんは、俺が少しAさんを否定するようなことを言ったら、急に怒って、ひったくりのことを教えてくれた。









ミツさん…早く戻って来てよ。

こんな時こそ、Aさんのそばに居なきゃダメじゃん…

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