今宵、私は月を見上げる 3 ページ35
.
「何で俺のとこくるんだよ…俺以外に話せる人沢山いるじゃん」
『…ダメですか』
「ハァ…別にいいけど」
久遠さんと一緒にいるといつも妙な懐かしさを覚える。何でだろう?どこか温かくて切なくて…
「なぁ君は親が憎いとか思わないのか?」
ふと飛んでいた私の意識を久遠さんが戻してくれる
『親…ですか?まぁ人間は自分達と違うものを怖がるのでしょうがないのかな〜と思います』
「そっか…強いんだね」
『でも久遠さんだって人間じゃないですよね』
「…は」
『だって「言うな!」
突然の大声に驚き体を揺らすと、それを怯えたと感じ取ったのか久遠さんは酷く傷ついたような顔をして何も言わず立ち去ってしまった。
『私今やっちゃった?』
〈自分のこと何も言いたくないあいつに対して、それを感じ取って言っちゃうお前が悪いわねぇ〉
『…』
こんなにもちゃんと否定する彼女は初めて見たし、自分の悪いことを具体的に突きつけられたのは初めてで、少なからずショックを受けたのだろう。
何も考えられなくなって、時間が止まったように体が動かず息ができず、そこで倒れるわけにもいかなくて。結果重い体を引きずって自分の部屋へと戻った
〈闇夜?ちょっと大丈『ごめん今は喋りたくない』
心配してくれている彼女の声も聞きたくなくて、緋星さんや陽葵さんが来ても私は部屋から出ていかなかった
『帰ろう』
生温かいところにいすぎたから感覚が鈍ったんだ。きっとそう。私はいつだって誰かのモノでなくてはならないしこんな辛くない幸せな生活は私には似合わない。
そう決意して私は彼女にも言わず窓から逃げたのだった
.
.
.
闇夜が逃げる1時間前
「出てこないんです闇夜ちゃん」
「僕たちが呼びかけてもうんともすんとも言わなくて…大丈夫かなぁ…」
「心配…」
「あの子についている大蛇さまは?」
「大蛇?誰のこと緋星さん?」
「え?会ったことないかい?朝日と喧嘩した…」
「綺麗な人でしょー」
「美人さんな人だよね〜」
「…私には同じ種族に見えましたよ?」
「…まぁそれはおいといて彼女はどこにいるのだろうか」
〈ここだよここ。狛犬の兄妹にキツネに天狗の坊っちゃんよ。いやーちょっとあたしが言葉をしくってしまってねえ〉
「そうでしたか」
〈そうそう。だからあたしのせい、と他の人にも伝えてくれるかい?〉
「?はい」
〈ありがとよ〉
.
154人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蓮井さん | 作成日時:2022年2月10日 0時