今宵、私は月を見上げる ページ24
.
「今日もあの子一人で話してるのよ。もう怖くて怖くて」
「大丈夫だ。もうちょっとであの日がやって来る。そのときにあいつを出せば!」
「そうねそうしましょう!」
私の世界はいつだって真っ暗だった。小さい頃から普通なら見えないものが見えて、聞こえない声が聞こえる。それは私にとって真実なのに、周りからしたら嘘になり私はいつまでも嘘つきでしかなくて。
「おい◼◼!お前は今日から山の上にある神社に行って生け贄となってこい。戻ってくるんじゃないぞ?」
『…はい。分かりました』
今日は私が捨てられる日。および村から不幸が消える日。私がいるせいでこの村には不幸がたくさん起こった。
山の上の神社に歩いて行くが、神社にあと一歩のところで村から出ていけたという安心感と空腹によって私の意識は途中で途切れた。
その次目にしたのは知らない天井と畳。
「大丈夫ですか?神社の前に倒れてたんですよ」
優しそうに話しかけてくれた白い服に身を包む人。奥にはこちらを伺いながらも怯える視線と殺意を飛ばしてくる視線が入り交じってた。
「僕は緋星といいます。ここの神社の神主でありまして…『…天狗さまですか』
「え?」
『初めまして。天狗さま今回の生け贄は私でございます。必要ない場合は村に帰りますので』
「何故天狗だと思ったの?」
『それは天狗さまの横にいる者が教えてくれました』
「?それはどういう」
「何で早く殺さないわけ?緋星」
「朝日…」
「おい人間お前の来るべき場所はここじゃないの。分かったらさっさと村に帰りな」
『分かりました犬神さま。汚い人間風情が神聖な場所に入り込んでしまって申し訳ございません』
誠心誠意おでこを床に擦りつけながら謝る。ここの人はちゃんと私を見て会話してくれることに嬉しく思いながら私は立ち上がろうとした
グラッ
「危ない!」
『申し訳ございません…大丈夫ですので』
「朝日この人が治るまでここに置くのは反対?」
「はぁ?!だってこいつ人間だぞ?」
「でも俺らの事すぐわかったよ?普通の人間とは違うよ」
「反対だ!あいつらだって怯えるじゃねーか。それにうちにはもう人間がいるってのに」
「部屋から出させないようにするよ?」
そのまま二人は何か話していたけど犬神さまの方が負けたのかため息をつき私を睨み出ていった。そうして私はここで過ごすこととなったのだった。
.
153人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蓮井さん | 作成日時:2022年2月10日 0時