3.弾む会話 ページ3
「声優さんなんですね…!」
『そうなんです。この店も先輩から教えて貰って。』
「やっぱり。若い方来るの珍しいからなんでかなって思ってて。」
『あー。お店見つけずらいですもんね。あっ、特に深い意味は無いですけど、』
「わかりますよ…。場所が悪いんだよなぁ。」
『なんでここにしたとかあるんですか?』
「隠れ家的なお店を作りたかったらしいです。」
『なるほど…俺は好きですよ、こういうお店』
「本当ですか…?じゃあこれからもご贔屓にお願いします。笑」
『こちらこそ。笑』
お酒を飲んだ彼は、さっきまでとはまた違った雰囲気で、なんだかずっと話していたいような。
心地いい声も相まっていつの間にか30分は軽くすぎてしまっていた。こんなこと…初めてだ。
『あ、2杯目貰ってもいいですか…?』
「あ、はい。何にしますか?」
『うーん…とりあえずさっきと同じので。』
「かしこまりました。少々お待ちくださいね。」
「店長さっきのスコッチの、もう1杯お願いします。」
『はいよー。』
『…この店にしては若いお客様だね。』
「そうですね。」
『…出会いなんじゃないの?』
「は?な、何言ってんですか!…お客様ですよ!」
『けど結構顔タイプでしょ?』
「それは…はい。」
『性格も良さそうだし。いいんじゃないの?』
何言ってんだこの人。
私のことを思って、気持ちを軽くするために言ってるのは分かるんだけど。今じゃない。今じゃないな。
「店長。口じゃなくて手を動かしてください。」
『ごめんなさーい。……でも、そんなに消極的だと損しちゃうよ?』
「分かってます……分かってますよ。」
彼は、
その言葉は、
今の私には効果抜群すぎるから。
「お待たせしました。どうぞ。」
『ありがとうございます。』
「お酒お好きなんですか?」
『そうですね…お酒無かったら今の俺無いんで。笑』
「え、何それ気になります。」
『うーん…まあ、いつか教えます。笑』
あ、踏み込みすぎたかな。
なんか、いつもより距離のとり方が上手くできないな。
「分かりました。いつか教えてください。」
『はい。笑』
なんだろう。全然いつも通りに話せない。
こんなの、嫌でも自覚してしまう。
7年も忘れていた気持ちが、
『バーテンダーさんもなんか飲みませんか?』
「え、よろしいんですか?」
『大丈夫ですよ。好きなの飲んでください。俺奢ります。』
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
『どうぞ』
目覚め始めているのかもしれないことを。
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作者名:週末。 | 作成日時:2023年2月28日 0時