-Lien-リアン【江口拓也】 (ページ1)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:5,311 hit

1．開店準備ページ1

ピピピｯ……ピピピｯ……

私の一日のスタートは少し遅い。

そこから重い体を無理やり動かして、朝食という名の昼食をとる。

そしてだらだらと準備をし、16時～17時ぐらいに家を出る。

さほど混んでいない電車に乗り、揺られること約20分。そこから徒歩15分のところにあるバーが私の職場だ。

ｶﾞﾁｬ。

「店長、お疲れ様です」
『おー。おつかれー。』

お店の名前は“lien-リアン”。
どっかの言葉で“繋がり”という意味らしく、バーでの良き出会いを願って店長がつけたらしい。

しかしそんなこと言っているが、このバーは飲み屋街から少し外れた場所にある。

なんでも隠れ家的なコンセプトで売り出しているらしく、いつも来るのは常連さんばかり。繋がりやら新しい出会いにはあんまり縁のない店になってしまっている。

まぁ、私はそんなこの店が好きなんだけど。

少し自分語りをしすぎてしまった。反省反省。

私の業務について。
私は基本接客がメイン。
お酒もたまに作るけど、大体は店長がやる。基本店長と私とバイト君2名の計4人でローテしながら働いている。

私は元から人と話すこととか、人の話を聞くのが好きだったからこの仕事は天職だと思っている。

まぁなんだかんだいいながらいつもあまり変化のない充実した毎日を過ごしている。

…変化がないのは人間関係も。

7年までに別れた以来、ここ数年、彼氏が出来ていない。まぁ、自分に勇気がなくて次に進めないだけなんだけど、そろそろ人肌が恋しくなる頃ではある。

「はぁ…そろそろ出会いが欲しいな…」
『え、どしたの急に』
「あっ、声に出てました…!?」
『まぁ、かなり、がっつりと。』
「まじか、無意識でした、ごめんなさい。」
『いいんだよ？』

店長とは結構こんな雑談をする。

『…まぁけどそんなに可愛い顔した子がなんでかなぁ…』
「ほんと、なんででしょうね…」

「ま、大丈夫です。これから一生1人でも生きていくって決めたんで。ここ楽しいから辞めたくないし。」
『嬉しいこと言ってくれるじゃん。』

『けど、20代でしょ？まだまだこれからよ。』
「いや、もう後半戦来てます。そろそろ30見えてます。」
『40代のおっさんに言われてもな…』
「助けてください人生の先輩……」
『どうすることもできんな……とりあえず気を紛らわすためにも仕事するか。』
「そうですね…」

こんな雑談をしたりしながら気づけば19時。
開店の時間だ。