Episode157 逃げてばかり ページ22
いつまでも続く長い廊下を、地下にいたせいで長く激しい運動をしなかった私は息を切らしながら走る。
それは、後ろから聞こえてくる軍靴の足音から。
燃え盛る炎の熱さから。
兵士たちの飛び散る血しぶきから。
――本で得てきた知識としてしか知らない、"戦争"という名の惨禍から逃げるように、ただ闇雲に走る。
私のせいだ。
全部、私のせいだ。
私がわがままだから。
私がお母様とお父様、そしてお兄様の言うことをちゃんときかなかったから。
だから、みんなが……！
その時、前頭部に軽い衝撃が襲い、よく知った香りがふわっと包み込んだ。
顔を上げてぶつかった相手を確認するより先に、わかりきったあの人の名前が思わず口から零れた。
『マサキ……っ』
不意に口をついた声はひどく掠れて、激しい息切れに紛れてしまって相手に聞こえているかも怪しい。
だが、それでもマサキはちゃんと返事をしてくれた。
「うん、ど、どうしたんだよA、そんな真っ青な顔して……とにかく息整えて、ほらゆっくり」
異様な雰囲気を悟ったらしい彼は眉をきゅっと寄せて、焦った様子で私の背中をさする。
しかし息を整えようとしても息切れはどんどん激しくなる。
息ができない。
空気をいくら吸っても吸えなくて、どんどん呼吸は激しさを増し速くなる。
「A！？ゆっくり、ゆっくり息して！！……まずい、過呼吸だ……！」
視界がぐにゃりと歪む。
マサキの切羽詰まった声は次第に遠のいてゆく。
私はどうしたらいいのだろう。
私はどうすればよかったのだろう。
ううん、そんなこと、とっくの昔にわかっていた。
王女として生まれたその瞬間から、全ては定められていた。
国のために生き、国のために死ぬ。
それが私の運命だった。
王族として生まれた以上、その運命から逸れるなんてことは許されるはずがなかった。
でも、そんな生き方はあまりにも悲しい――
マサキに縋るように彼の服を力なく掴んだ瞬間、視界は真っ黒に染まった。
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愛瑠(プロフ) - 豪炎寺晴矢さん» ありがとうございます！この時期は人生最大の多忙を極めているので更新できませんが、春になったらたくさん更新するつもりです。見捨てず暖かい目で見守ってくださると幸いです。 (2018年12月22日 10時) (
レス) id: cf3c21e846 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺晴矢 - 楽しく読んでいます!!これからも頑張ってください! (2018年12月1日 20時) (レス) id: 0d4b0ee8a9 (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - 詩子さん» 中世〜近世ヨーロッパを意識して書いているので、基本的な歴史の流れなどに矛盾がなるべくないようにやっております。光栄なお言葉ありがとうございます、遅い更新ですが頑張ります！ (2018年9月28日 7時) (レス) id: cf3c21e846 (このIDを非表示/違反報告)
詩子(プロフ) - 私学校で世界史を選択してるんですけどすっごく世界史の中の話みたいで面白いです！これからも頑張ってくださいね。応援してます！ (2018年9月27日 23時) (レス) id: 77572e4f5d (このIDを非表示/違反報告)
とくにないです(愛瑠)(プロフ) - カナメさん» そう言っていただけると本当に励みになります！ありがとうございます！！ (2017年12月19日 16時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愛瑠 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/baraannzu1/
作成日時：2017年7月17日 7時
