第140話 ページ16
「ほいっ、差し入れ！無理しないでよー？」
ある日の夕方。
今日の売上を計算してまあまあかな、などと考えている時。
上から降ってきた声にふと顔を上げると、今日の営業は終わったはずなのに、親友の野咲さくらが笑顔を咲かせて机を挟んだ目の前に立っていた。
同時に机にぽんと置いたその袋は……その袋は！！めっちゃ並ばないと買えない幻の洋菓子店やんけッッッ！！！
なぜさくらが急にこうして差し入れなどという真似をするのかという疑問も一瞬で頭の中から消え去り、ただ魅力的な紙袋に釘付けになっていると、彼女は私の頭を軽く小突き、馬鹿、と呟く。
「あんたってほんとここのお菓子好きよね。目がキラキラしてる」
『わかりやすくてすいませんね……』
「そーそー。わかりやすくてかわいい子」
ほら、一個食べなよと促され、シュークリームを手に取り一口かじると、上品なクリームの甘さが体にしみ渡るようにじんわりと口の中で広がった。
さくらはそんな私を一瞥してふっと微笑むと、近くのソファに腰掛ける。
「だいたいねえ、なんで働くの？今はA一人だけの体じゃないのよ。そんなやつれるまで働いて……赤ちゃん、苦しがってるわよ」
『……』
もう一口かじろうと口に近づけた手がぴた、と止まる。
――そんなことはわかっているのだ。
頭では分かっているのだけれど、実感がわかない。
「ご両親だっているんだし、サポートしてもらえばいいじゃない。なんなら私や葵にでも頼ればいいのよ」
『……でも、……』
「なーに。言ってみなさいよ」
『……お父さんとお母さんに頼ったら、今まで以上に私たちに干渉してくるようになる。それが嫌だから……それに、隼人がいないだけで不安で……すぐあの人のこと考えては辛くなるのがもう耐えられないの……だから、仕事で考えないようにするの』
心做しか手に力が入る。
シュークリームのクリームがにゅっと出てきて、慌てて手の力を抜くとゆっくりシューの中に戻っていく。
「瞬木って、カスね」
まったくもって激しく同意である。
でも好きになってしまったから、それさえも愛しく感じてしまうのだ。
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莉央夏 - 続きが気になりますー！ (2021年8月18日 8時) (
レス) id: e85eafe245 (このIDを非表示/違反報告)
さっちん - コメント失礼します。また更新停止になっていますが大丈夫ですか？これから先どうなるのか気になります！更新してくださいね。 (2020年10月9日 22時) (レス) id: 9ffba0b2d2 (このIDを非表示/違反報告)
もちもちにゃんこ(プロフ) - ずーーっとまってます！いつか続きが見れると信じて！ (2019年9月1日 0時) (レス) id: 5f0e397fd7 (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - はーちゃんさん» ありがとうございます！勉強のせいで更新が遅くなってすみません……がんばりますので見守っていただけたら幸いです (2018年6月29日 15時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
愛瑠(プロフ) - みるみるさん» あああ優しいお言葉ありがとうございます…！更新遅くてごめんなさい！かならずいつか完結させますので応援していただけると嬉しいです。 (2018年6月29日 15時) (レス) id: 871e7b599c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とくにないです(愛瑠) | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/baraannzu1/
作成日時：2016年3月12日 3時
