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ある日僕は城へ行くことに決めた。

「そんな噂は嘘でございますよ」
 最後の確認として噂の真偽を尋ねた老百姓の答えは、今までのものとまったく違っていた。
「あの城には、この世で一番美しい姫君がいて、百年眠り続ける事になってはいますが、ある王様のご子息によって眠りから覚まされ、その方のものになると決まっているそうですよ」

 そしておおよそ今が百年目。

 血が、僕の中で騒いだ。
 そこにいるのが鬼であろうと、姫であろうと。僕は城に行ってみるべきだ。会えば僕の何かが変わる。


 僕が近づくと、茨はすっと道を開けた。

「茨の森を通り抜ける力は人喰い鬼にしかない」
 噂の一節を思い出し、僕は苦笑する。

 やはり僕も人喰い鬼なのだろうか?

 だが、歩き続けていくと「姫君」の話の方が信憑性を増していく。

 城のあちらこちらで、何もかもが眠っていた。人も、動物も、燃えさかる火でさえも。

 僕が城の奥へと歩みを進める。最奥の金色に輝く一室に、十五、六才の姫が神々しい姿で眠っていた。

 オイシソウ!

 体が震える。唇をなめて近づき、傍らに跪く。

 食ベタイ、食ベタイ。コノ人ナラ、食ベテモ、バレナイ、支障ハナイ。誰モ、見テイナイ。オイシソウ。食ベタイ……!

 その時、姫が目をゆっくりと開けて、優しいまなざしで僕を見つめた。

 同時に城の他の場所でも人が起き出す気配がする。

 モウ、彼女ヲ食ベラレナイ。食ベテハイケナイ。

 落胆しそうになる僕に、姫が言葉をかけた。

〜おとぎ話〜→←6



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設定タグ:眠り姫 , おとぎ話 , 童話   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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ソフィア(プロフ) - 多かれ少なかれ、人は狂気や何かへの渇望を抱えていると思うので、これは自分の話でもあるのだろうと思いました。こういうのも好きです。 (2016年2月19日 8時) (レス) id: 150cb2cc61 (このIDを非表示/違反報告)
まゆう - 眠り姫の小説面白かったです! (2016年2月19日 1時) (レス) id: cb6946ca27 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かやたび | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=banri25  
作成日時:2016年2月18日 23時

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