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だが、それが間違いである事を、僕は十二の年に自覚してしまった。
僕と遊んでいた子供達の中の一人の少女が転んだ。肘から赤い血が流れた。
白い肌、流れる鮮やかな赤。
それを見た時、僕の体の血がすべて逆流する感覚がして、もう一人の僕が頭の中で叫んでいた。
オイシソウ!
コノ赤イ血ヲ啜ッタラ……?
白イ肌ニ噛ミツイタラ……?
ドンナ、味ガスルノダロウ!
「大丈夫? ナメテアゲルヨ。消毒ノ代ワリニナルンダッテサ」
僕はほとんど無意識に傷に唇をつけた。
甘イ……。
かぐわしさがまた嬉しくて、その肌に歯を……牙を立てそうになる。そこで僕は我に返った。
何をしようとした? 何を思った?
急に怖くなり、僕はそこから逃げた。膝を抱えて震えていた。そんな僕に、母が気づいて声をかけてきた。
「どうかしたの、王子?」
「母上……」
僕を見つめる母のあたたかいまなざしの中に、僕は食べ物を吟味する光を見つけてしまった。
『オイシソウナ、美シイ子供ノ肉!』
僕は憎悪した。母から受け継いだ、人を食べたいと考える、この体に流れる血を。恐ろしい欲望を。
「何でも、ありません」
僕は心を遮断した。
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ソフィア(プロフ) - 多かれ少なかれ、人は狂気や何かへの渇望を抱えていると思うので、これは自分の話でもあるのだろうと思いました。こういうのも好きです。 (2016年2月19日 8時) (レス) id: 150cb2cc61 (このIDを非表示/違反報告)
まゆう - 眠り姫の小説面白かったです! (2016年2月19日 1時) (レス) id: cb6946ca27 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かやたび | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=banri25
作成日時:2016年2月18日 23時