【WT】雲のように白く【短編集】 (ページ9)

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求められない答え / Nk ページ9

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⚠︎学パロ

勉強は得意な方で、定期テストでは1位の席を譲ったことはない。

先生が私に意地悪で難しい問題を出しても、少し時間はかかるが解けてしまう。

けれど、どんなに頭を使っても分からない事がある。

「Aさん、この問題分かる？」

『それはこの公式使うとできるよ』

「じゃあこっちは？」

『ここに補助線引くとわかりやすいかも』

「ほんとだ…！ありがとね！」

『いいえ』

それはなかむくんの考えてること。

水色のシャープペンシルをすらすらと滑らせて計算を終えると、爽やかな笑顔を浮かべてお礼をするなかむくんを見て胸が高鳴る。

なかむくんは皆から慕われてる人気者で、だから教室の隅っこで本を読んでる私にも声をかけてくれる。

声というか、ただ勉強で分からないとこ聞いてくれただけだけど。それでも嬉しくてつい頬が緩む。

それじゃ！とヒラヒラ手を振ってなかむくんは教室を出ていき、部活に向かっていった。

ドアについてる小窓からは、屈託のない笑顔がキラキラと輝いており、太陽よりも眩しかった。

先程までは賑やかだった教室も、今ではすっかり静かになっていて、夕日が綺麗に差し込んでいた。

集中できそうだな、と思って化学のワークを開いてにらめっこする。

集中力が切れて視線をあげると、時間はかなり流れており、壁にかけられた大きな時計は最終下校時刻の30分前を指していた。

綺麗なオレンジ色で包まれていた教室も、今では冷たい闇に包まれている。

帰る準備でもしようと思い席を立つと、ドアが誰かの手によって開かれた。

『わあっ…！』

「驚かせてごめん！」

『私も、大きな声出してごめん…』

そこには部活終わりのなかむくんが立っていた。どうやら忘れ物をしていたらしく、自分の机を漁っている。

準備を終え、忘れ物がないか確認して立ち上がって帰ろうとすると、一向に忘れ物が見つからないなかむくんが心配になり声をかける。

『大丈夫…？探すの手伝おうか？』

「だ、大丈夫…！」

『でもさっきからずっと探してるし…』

「あった！」

そう言って文庫本を机から取り出し満面の笑みを浮かべるなかむくんを見て安心する。

『よかった、安心だね』

「うん！Aさんありがとね」

『全然、見つかってよかった…また明日ね』

「待って…！」

手を振って教室を出ようとすると、なかむくんの大きな手が私の手首を包む。