第9話 ページ11
「お早う。A。例の3人はどうだったかな?」
任務が終わり、柱合会議の少し前に俺はお館様の所へと足を運んだ。任務報告ってやつだ。
俺はお館様の瞳を真っ直ぐ見すえ、口を開いた。
「はい、あの3人が加わったことで鬼殺隊の今後に大きく影響するでしょう。俺が保証します。長年変わらなかった十二鬼月の体勢が崩れるかと。3人は他のものとはまるで異彩です。短期間で大幅に成長すると思われます。」
俺の言葉を聞くなりお館様は頷き微笑んだ。なぜあんなに自然に笑えるのだろうか。
「ありがとう、A。矢張り君は人を見る力が強いね。それはとてもいい事だよ。」
でも、とお館様は俺の目を見据え口を開く。
「私はAが心配だよ。何をそんなに恐れているんだい。誰もAに清く正しく生きなさい。とか、人を裏切っちゃいけない。とか、言ってないんだよ。それはとても大切なことだ。
でも私にはAが無理をしてるように見える。
まるで無理やり整頓された人生を、他人の笑顔を真似した顔で生きてるみたいだ。」
お館様の言葉が、何故か頭によく響いた。確かにそうだ。お館様にはお見通しなのかな。
そう思うと無性にバレるんじゃないかって怖くなって俺は笑みを作った。確かにこれはコピーした人の笑顔だ。俺の笑顔じゃない。
「ご心配ありがとうございます。然しながら、俺は大丈夫です。今のお言葉、胸に刻んでおきます。」
だが、これだけはバレたら絶対にダメだ。せっかく手に入れた俺の居場所がなくなってしまう。
無理をして取った柱としての称号も、斬りたくもない鬼達を斬ったのも、育ててくれた鬼に嘘をついたのも、全部この嘘を貫き通すためなんだ。
最低な奴だな、と自傷してしまうほどに、もう俺は手遅れなんだ。
「そうかい。ならいいんだけどね。何かあったらすぐ私の所においで。話くらいは聞けると思うから。さあ、そろそろ半年ぶりの柱合会議が始まるよ。みんな元気かな。」
そう言ってお館様は皆の元へ向かった。俺は一人広い部屋に取り残され、取り乱していた。
俺だってこんな用意された人生、嘘を貫き通した自分の結末へ向かい彷徨いたくない。
俺の人生とは絞首台に向かう死刑囚かなんかなのだろうか。
「この思いもきっと嘘に違いない。そうだ、これは嘘だ。」
そう自分に言い聞かせることしか出来なかった。
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らずぴす(プロフ) - 雷雅さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年8月29日 20時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
雷雅 - 更新頑張ってください! (2019年8月29日 19時) (レス) id: e8ca574508 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - 夜桜さん» ありがとうございます!コメント励みになります! (2019年8月20日 6時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 - すごく続きが気になります。 (2019年8月20日 1時) (携帯から) (レス) id: 6b3eeca1de (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - レイラさん» ありがとうございます!! (2019年8月9日 20時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らずぴす | 作成日時:2019年7月22日 21時