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35話 ページ36

「俺にとって太宰は大切な友人だからだ。友人には尽くすものだろう。」



俺はもう一度背を向けたままの太宰に言った。太宰の肩が大きく揺れて、勢いよくこっち振り向いた。泣き方がわからない子供のような顔で俺の顔をまっすぐ見つめた。太宰は俺に似てると思った。孤独に耐え、闇を彷徨う者だとな。だから初めて見かけた時何となく放っておけなかった。



でも違った。太宰は俺よりも遥かに闇の深いところに居て、その闇の中で独り泣いているんだ。そして太宰が思っているよりも、寂しがり屋で甘え方がわからない大きな子供だ。



俺は太宰の両肩を掴み、瞳の奥の闇を捉えるような真っ直ぐな視線を向けた。
俺は一息置いてから、口を開く。



「太宰、そんなに俺が信用出来ないか。」



太宰は首を左右に激しくふった。良かった、嫌われてるみたいじゃ無さそうだ。
太宰の虹彩に少し色が宿る。俺は太宰に微笑み優しく言った。



「じゃあもう一度言う。俺を頼れ。俺じゃなくてもいい、心から信用できる人を見つけて頼れ。
織田作の言うとうり孤独は埋められないかもしれない。でも、隣にいることは俺でもできる。」



「……うん。」



俺は太宰の頭を撫でた。齢一つしか変わらないのに、太宰はみんなが思っているよりも幼い。



「大丈夫だ。人を救う側になれる。居場所がないなら俺の家に住めばいい。なんとでもなるんだよ。
……だから安心しろ……太宰。」



俺は太宰の片目に巻いていた包帯を解いた。ハラハラと落ちていく包帯がゆっくり、地面に落ちていく。太宰の瞳に色が戻る。
太宰は一つ零れ落ちて頬を伝ったものを拭い俺の肩に顔を埋めた。兄に甘える弟のように。全く、最初からこうすれば良いのだ。俺は太宰の頭をもう一度撫でた。このくらい、いいだろ。




俺は漱石じいちゃんによく頭を撫でられた。それをされると何故か心が落ち着いて穏やかな気持ちになる。俺に愛情をくれたのは他の誰でもない、漱石じいちゃんだ。
今考えると俺はたくさんの人に救われたと実感する。



「ありがとう……」



太宰は掠れた声で俺の肩に顔を埋めたまま呟いたのを聞き逃さなかった。
俺はやれやれと笑い、どういたしまして、と呟いた。
本来ありがとうを言わなきゃいけないのは俺の方だ。俺は太宰にたくさんのことを教えて貰ったからな。



「俺こそ、ありがとう。」



そう言うと太宰は俺から一歩離れどういたしましてと笑った。今までで一番輝いた笑みだった。

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らずぴす(プロフ) - *ふわ*さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!!更新頑張ります! (2019年5月1日 15時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
*ふわ* - 初コメ失礼致します!主人公くんの性格その他もろもろ込みでこの作品のファンです!!更新頑張ってください!応援してます!! (2019年4月30日 20時) (レス) id: 18cb4fa1f4 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - 薙(nagi)さん» ありがとうございます!そう言って貰えて嬉しいです! (2019年4月28日 21時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
薙(nagi) - 好きです((設定とか主人公の立ち位置が好みです!もう産まれてきてくれてありがとう!(?) (2019年4月28日 19時) (レス) id: ea3376027d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らずぴす | 作成日時:2019年4月19日 19時

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