6話 ページ7
山は無事降りられたものの、俺が居た城の場所はビルになっていて跡形もなく消えていた。やっぱそうだよな。100年後なんだよな、此処。
そして何よりやることが無い。友達を作りたいところだが人が多いし歩くのが早いので話すに話しかけれない。コミュ障発症すんなよ俺……王は立派に務められたじゃないか……
「あの……顔色悪いけど大丈夫かい?」
声の方向を向いてみると優しそうなシワシワのおじいちゃんがいた。折角話しかけてくれた。此処は丁寧に対応しなくては。
「は、え、えっと……だ、だ、大丈夫です。」
二人の間に北風が吹いた気がした。その空気に耐えられず俺はその場から逃げ出してしまった。
なんで俺普通に喋れねぇんだよぉぉおおおお!そんな悲痛な叫びは誰に聞かれることも無く車の音に消されて行った。
しばらく歩いてると川沿いの道を見つけたのでとぼとぼと歩く。気づけば辺りはオレンジ色に染っていてそれが川に反射して輝いている。
「ほんと、何やってんだか……」
夕焼けに吸い込まれるような声で呟く。なんだよ、焦る必要ないとか余裕ぶっこいて俺全然友達作れねぇじゃん……もう泣きたい。俺メンタル砂のお城だから。すぐ崩れちゃうから。
5分ぐらい歩いていると川岸に座って何かを読んでいる少年を見つけた。この世界の俺と同い年くらいの齢の子。頭、首、腕など華奢な体躯に包帯が巻かれており、痛々しい。何より俺と同じ目をしてるのが気になった。じーと見てるとその少年と目が合った。やばい、見すぎた……
「君、なんか僕に用?さっきからジロジロ見て。」
その少年は本を読みながら感情のない声でこちらに問う。今度こそ……今度こそ上手く喋ってみせるぞ。
「その本……な、何読んでるんですか?」
「そんな無理やりな口調で言われてもねぇ。普通にしゃべってよ。同い年か一個上くらいでしょ。」
そう言われて怯むが、俺は負けないぞ。
「ああ、悪い。何せ喋るのが苦手でな……もう一度聞く、君はなんの本を読んでいる……の?」
だんだん恥ずかしくなり小さくなるが、少年はそんな俺をチラッと横目で見てから此方に勢いよく体を向けた。おお、ビビった。
振り向いた少年の顔は満面の笑みでキラキラと輝いていた。
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らずぴす(プロフ) - *ふわ*さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!!更新頑張ります! (2019年5月1日 15時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
*ふわ* - 初コメ失礼致します!主人公くんの性格その他もろもろ込みでこの作品のファンです!!更新頑張ってください!応援してます!! (2019年4月30日 20時) (レス) id: 18cb4fa1f4 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - 薙(nagi)さん» ありがとうございます!そう言って貰えて嬉しいです! (2019年4月28日 21時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
薙(nagi) - 好きです((設定とか主人公の立ち位置が好みです!もう産まれてきてくれてありがとう!(?) (2019年4月28日 19時) (レス) id: ea3376027d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らずぴす | 作成日時:2019年4月19日 19時