10*まふまふ ページ10
『ん…』
目を覚ます。
ふかふかしたベッドに、私は眠っていたようだ。
…あれ、私の家のベッドこんなにやわらかかったっけ。
ていうかその前に、私昨日家帰ったっけ。
確かまふまふくんの家に行って、それで―――…
――――…ジャラリ。
非日常じみた音が、自分の足から聞こえる。
パッとそちらに目をやると。
『なんで…!?』
足を動かすたびに五月蝿く音をたてる、足かせ。
すると。
「あ、目、覚めたんだ。おはようA」
『っ…!?』
いつの間にきたのか、まふまふくんが私の隣で笑っていた。
すぐに足かせを外してもらおうとする。
しかし、まふまふくんはそれが当然のように“お腹すいた?”なんて聞いてきて。
『え…ま、まふまふくん』
「なにー?」
楽しそうに私の体からタオルケットを取るまふまふくん。
足かせに気を留める様子は無い。
恐る恐る聞いた。
『足かせ、外してくれないかな…』
「え?なんで?」
『なんでって…』
そこまで言って、気がつく。
まふまふくんの私を見る目が、
「だってA、俺のこと好きなんでしょ?」
否、私の“足かせ”を見る目が、
「ずーっと一緒にいようねって、言ったじゃない」
――――…異常なほどに輝いていることに。
ぞくり、背中を怖気が走る。
『ま、まふまふ…くん』
「異常だって思ってる?あは、やだなー…だってこれも愛してるからでしょ?」
するり。
猫のような身のこなしで、まふまふくんは私の隣に擦り寄る。
大事なものを愛しむかのように、私の頬を撫ぜる。
『ひッ…』
「俺のことが好きなら、ずっと一緒にイレルヨネ?」
クスクスクス、クスクス。
カーテンの締め切られた、時計の無い暗い部屋に、まふまふくんの笑い声が響く。
「そうそう、ここ、俺の部屋なんだ」
思い出したかのようにまふまふくんが口に出す。
恍惚とした表情を浮かべて、私をじっと見ながら。
「Aにあったときから一目ぼれでね。…いつかこの部屋につれてこようと思って、足かせも準備してたし、きちんと片付けてもおいたんだ。…まあ、もとからあんまり物は無いんだけどね」
殺風景な部屋。
ここは、まふまふくんの部屋だったんだ。
ていうか待って、
――――…いつかこの部屋につれてこようって、
「Aが俺のことを好きでよかった。無理やりなんて、本当は嫌だったんだよね」
『――…っ』
私がここに来ることは、決まっていたってこと、ですか―…?
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私の前で語尾に矢印をつけないでください - 完成度高過ぎて🤦🤦 (2023年1月16日 23時) (レス) @page50 id: 28b1a8c3b0 (このIDを非表示/違反報告)
meal - なんだか深い小説でした 作者様のあとがきに色々と考えさせられました (2017年8月29日 19時) (レス) id: 94e05bb702 (このIDを非表示/違反報告)
みみね - カッコいい小説でした。 (2017年5月12日 20時) (レス) id: 4825a094c8 (このIDを非表示/違反報告)
さやえんどう(プロフ) - ナノハナさん» 久しぶりに見たらコメントが来ていたので驚きました。ありがとうございます!とっても嬉しいです! (2016年10月12日 17時) (レス) id: b6c08d2ce6 (このIDを非表示/違反報告)
ナノハナ - こんにちは、この小説を読みました。どのお話もすごく良かったです。特に狂愛のお話はあまりにも切なくて泣いてしまいました。 (2016年10月8日 13時) (レス) id: edb9894186 (このIDを非表示/違反報告)
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