小夜曲 ページ40
.
壁外調査を終えて初めて迎えた秋だった。
初陣は生きて帰ってくりゃ立派だというリヴァイの言葉を、ノアは遵守した。
人生で初めて見た外の世界は激情的であった。まず内側では見たことのない草花に、またそれらの匂いに今すぐ馬を飛び降りて寝転がりたい気持ちに駆られるのをぐっと抑え込まなければならなかった。太陽光をいっぱいに受けた植物たちが作る空気が肺に入れば夢心地で、壁内から続いているはずの空も涙ぐましく鮮やかに見えた。
今回の壁外調査は壁外にある補給拠点の設置とその行路を固めるのが目的だった。
2日かけて目的地に到着し初陣で疲れたはずの身体も、その昔東洋の地に生育していたというシソが群生しているのを近くに見つけてしまえば我も忘れて突撃してしまい、エルヴィンとの談合を終えたリヴァイに襟首をつかまれるまで悦に浸っていた。
持ち帰りたいと言わんばかりのノアの熱望の眼差しとそんな彼女に有無を言わさず却下するリヴァイの光景を見ていたハンジが、初陣特典とかいう聞いたことのない特別賞でリヴァイを折れさせた。
その後もやいのやいの言い合いを続ける2人を眺めていたノアが兵長は案外尻に敷かれるタイプかと緊張感のないことを思っていたら、余計な邪推を働かせるなと頭をはたかれた。
もちろん心躍る出来事ばかりではなかった。また2日かけて帰ってくる間に数十の犠牲が出た。
人知を超えた存在の手にかかった人間の死にざまは薬屋を営み人の生死にほど近いところにいたノアでも堪えるものがあった。
門をくぐれば無意識にも尖っていた神経が一気に緩み全身から汗が噴き出た。
兵舎に帰り着き馬をつないでいたところでリヴァイに上出来だと声がけられてやっと生きながらえたことを実感したのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 143人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
寿司(プロフ) - 如月さん» コメントありがとうございます。お褒めの言葉、とてもありがたいです。続編についてですが修正のため一時公開を制限しておりました。只今パスワードを解除しましたのでお知らせいたします。これからもよろしくお願いします。 (12月15日 22時) (
レス) id: 43549444da (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - とても好きな作品でいつも続きが気になっています。続きが気になって読みたいのですがパスワードを解除することはできないでしょうか？ (12月15日 17時) (レス) id: a8542e33a5 (このIDを非表示/違反報告)
寿司(プロフ) - アイカさん» コメントありがとうございます！拙文ではありますが楽しんでいただけると嬉しいです。 (11月21日 22時) (レス) id: 43549444da (このIDを非表示/違反報告)
アイカ(プロフ) - 自分の好きな漫画のクロスオーバー！！中々ない組み合わせなのでめちゃくちゃ嬉しいです！！ (11月7日 21時) (レス) @page16 id: bda3c5db2c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：寿司 | 作成日時：2023年10月14日 23時
