調薬 ページ23
.
団長から声をかけられた。
ノアはというと実験の結果班員ともども研究室まで煤だらけにしたハンジと、彼女を烈火のごとく叱り飛ばした挙句いつの間に着替えたのか積年の鬱憤を晴らすかのように説教垂れながら掃除を始めたリヴァイから逃げ出しやっとのことで昼飯にありついたばかりだった。
食事中にすまないねと穏やかに笑って見せたエルヴィンはさながら天女のようであった。
執務室に来てくれということだったので急いで済ませますと応えると、丁寧に畳まれたハンカチが差し出される。
｢身支度を整えてからで構わない｣
頬をつん、と指さし立ち去ったエルヴィンに言われたがままハンカチを受け取ったノアが頬を抑えると、掠れた煤がついていた。
だいたいはきれいにしたつもりだったが、これは洗って返さねば。
小っ恥ずかしさを覚えノアは残りのスープをかきこんだ。
執務室もとい、団長室に行くのはこれでやっと2回目だ。
もちろん初回は調査兵団に来ることになったあの日。思い出したくないがドアの前まで来ると意識せずとも背筋が伸びるものだ。
遠慮がちにノックをして名乗ると想定と違う声が返ってくる。入ると昼食前に取り残した上司が優雅に紅茶を啜っていた。
｢上官を放置とはいい度胸だなノア」
｢ごきげんようリヴァイ兵長。放置だなんて滅相もありません。分隊長とたいそう仲睦まじいご様子でしたのでわたくしのような端女が水を差すわけにはいかぬと」
｢その善行で俺は飯を食い損ねたがな」
｢では夕餉はご一緒しましょう。もしお姿が見えなければお迎えに上がりますわ」
｢よく喋るな薬屋｣
似合いもしない丁寧語で減らず口のノアに飽きたリヴァイは独特な持ち方でカップに口をつけた。
食い損ねた、と言ってはいたがリヴァイが几帳面で規則正しい気質に似合わず食事にルーズだということをノアは知っている。
日々膨大な業務に追われていることも理由なのだろうが、彼の場合は食の優先度がそもそも低いのだと思う。
食べぬことには生きながらえぬと養父に口酸っぱくいわれていたノアは、今度兵長にリンゴでも剥いてやろうかなどと考えていた。
そうこうしていると奥の部屋に行っていたらしいエルヴィンが何やら包を持って戻ってきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 143人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
寿司(プロフ) - 如月さん» コメントありがとうございます。お褒めの言葉、とてもありがたいです。続編についてですが修正のため一時公開を制限しておりました。只今パスワードを解除しましたのでお知らせいたします。これからもよろしくお願いします。 (12月15日 22時) (
レス) id: 43549444da (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - とても好きな作品でいつも続きが気になっています。続きが気になって読みたいのですがパスワードを解除することはできないでしょうか？ (12月15日 17時) (レス) id: a8542e33a5 (このIDを非表示/違反報告)
寿司(プロフ) - アイカさん» コメントありがとうございます！拙文ではありますが楽しんでいただけると嬉しいです。 (11月21日 22時) (レス) id: 43549444da (このIDを非表示/違反報告)
アイカ(プロフ) - 自分の好きな漫画のクロスオーバー！！中々ない組み合わせなのでめちゃくちゃ嬉しいです！！ (11月7日 21時) (レス) @page16 id: bda3c5db2c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：寿司 | 作成日時：2023年10月14日 23時
