制服を脱がして、裸の心で【場地圭介】 (ページ4)

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「英単語試験に落ちた…？」

「お前も俺のこと馬鹿にすンのか」

なんかの詐欺への勧誘かと思って身構えて、場地圭介の隣に腰をかけていた私は、そのぐちゃぐちゃな紙を開いて、唖然とした。まさかの英単語試験の答案用紙だった。
更に、何かの間違いかと思っていた、一年生のクラス表に書いてあった「場地圭介」の文字は間違いでは無かった。場地圭介が持っていた答案用紙には、「一年A組」としっかり書かれていたのだ。
…立っていたら腰が抜けていたかもしれない。この人留年してる。
驚きで震え上がるも、別に馬鹿にしている訳では無いので(自分ではそのつもり)、慌てて返事をする。

「まさか…馬鹿にしませんよ。」

「じゃあなんでそんな驚いてンだよ」

驚くことなんてたくさんあるでしょうが！！！
と心の中で呟くも、場地圭介に殴り殺されないよう、思いつく限りの言い訳を考える。

「去年は、英単語試験を受けてるところを見ていないような気がして…」

「あー確かにそうかもな」

思いの外アッサリと私の話を受けいれた場地圭介は、右手で指を折って「1..2....いや0だな」と、おそらくテストを受けた回数を数えていた。0回だったらしい。いや、間違いなく0回でしょう。

「頑張ったんだけどな。赤点とっちまった」

…頑張ったんだ。へぇ。
失礼にもほどがあるが、適当に聞き流していたら、場地圭介は「ちょっと待ってろ。」と目の前の家に駆け戻り、1分も経たないうちに一冊の単語帳を片手に帰ってきた。
そして、「ここがテストの範囲」と、妙に慣れた手つきで最初の20ページほどを開いて見せてくれたのだが、その部分だけ紙が凄くヨレていて、その上食べ物をこぼしたシミまで見受けられた。
…本当に、勉強したんだ。凄いよ。
と思わず声に出そうになった。
完全に偏見だけども、頑張ることさえできなそうな見かけ、風貌なのに、きちんと頑張ったと自分で言えていることが凄い。そして本当に頑張っていたことが凄い。感動してしまった。
私なんか、塾に居ても頑張れないのに…。

「凄いですね、本当に頑張ってる」

「でも落ちた。まるで意味がねーな」

深いため息をついて「なんで英語ってこんなムズイんだ。」と呟く場地圭介を見ていたら、なんだか悪い人では無いような気がしてきてしまう。

「どうやって勉強したんですか？」

「あ？そんなのひたすら見るに決まってンだろ」

「…声に、出すといいですよ」

気づいたら、場地圭介の力になれたら…と話し始める私が居た。