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私と場地圭介が出会ったのは、中1の入学式だった。
橋本という名字の私と、場地圭介という名前の少年は、出席番号が前後だった。
初めて彼を目にした時、プリントを回すために振り返ったら、男の子にしては長めの髪をタラッと垂らして、机に突っ伏してクカクカと気持ち良さそうに寝ていた。
…入学式なのに、呑気。と思いながら、彼を起こさないようにプリントをそっと、彼と机の隙間に滑り込ませたことを鮮明に覚えてる。
ところが、彼は1年間ほとんど学校に現れなかった。
現れたと思ったら、授業中に校内をフラフラ歩き回ったり、突然すれ違いざまにすれ違った男の子をぶん殴ったり。
常軌を逸した行動を何度も何度もするお陰で 、彼は学校に来ないにも関わらず、一躍有名人となった。
ここまで来ると、私が無事に1年間を乗り越えられたのは奇跡なのでは無いか、と何度も思ったが、中学2年生に進学した時は、まさか…と、乗降口に張り出されるクラス発表の紙を見て、そして新たな"場地圭介"を見て、口をあんぐりと開けた。
なんと、場地圭介の名前は一年生のクラスに入れられている上に、目の前の新たな"場地圭介"は、髪の毛をピッチリと7:3に分け、瓶底のようなメガネを掛けた、今までの場地圭介からはなんとも信じ難い姿だったのだ。
場地圭介を取り囲む、金髪の少年これもまた有名な佐野万次郎くんと、長身でこめかみにドラゴンのタトゥーを入れてるこれもまた有名な龍宮寺賢くんが、「場地、お前まじでおもしれーよ!」「場地、超似合ってンぞー」と大きな声で煽らなければ、絶対にこの少年が場地圭介だと気づかなかった。
「うっせぇ…お前ら…殺す」
初めて聞いた場地圭介の肉声は、なんとも物騒なワードと共に脳内に流れてきた。
怒りでぷるぷると震え、足で佐野くんと龍宮寺くんを容赦なくドカドカと蹴る姿は、前の場地圭介そのものだった。
変な人…
そう思いながら、金輪際絶対あの人とは関わらない!と決め、その日私は帰りの塾にも寄らず、真っ直ぐ家まで向かった。
なんの変哲もないいつもの帰り道。
公園の隣になって、綺麗な緑の広葉樹がワサワサと揺れ、もう既に散ってしまった桜の花びらを踏みつけ、新学期って憂鬱だけどだな…と、完全に場地圭介の出来事も忘れかけていた時だった。
「…え」
目を疑った。
「ん…誰だお前」
目の前に居たのは、私と同じアパートの下の階、「場地」という標札の部屋から出てきた場地圭介だったからだ。
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作者名:ポット | 作成日時:2021年9月12日 17時