11 baji ページ12
絆創膏なんて付けるのも嫌だし付けたこともねえくらいだったが、コイツがあまりにも不服そうな顔をするから渋々付けて帰ることにした。
そのためかコイツは帰路も妙に上機嫌で、俺に東卍のことをこれでもかというくらい聞いてくる。初めて悪い世界に足を突っ込んだであろうコイツの表情は、何故かイキイキキラキラしてて、変に巻き込みたくない気持ちもあれば、ちょっとくらいバイクの後ろに乗せて走らせたい気持ちも湧いてきた。
「…なぁ、今度俺の後ろ乗るか」
こんなこと女に言う日が来ると思ってもみなかった。
ウキウキと足元を踊らせて先をいくコイツが、今までで一番の笑顔を見せて振り返った時、胸が締め付けられる。
「…バイク?」
「おう」
「の、乗ってみたい!」
「スピードは守ってね、怖いから」なんてまた俺には無理難題なことをサラッと言うコイツは、俺の身の回りの中では明らかに異端児だった。
いつもより数倍も短く感じた帰路も、コイツが隣にいたからなのかもしれない。
「バイバイ」と、入学式のあの怯えた顔が嘘みたいに、明るい顔で俺にそう言うようになったコイツの姿を見て、心底嬉しくなりながら、10年ぶりくらいに、「バイバイ」と手をぶり返してしまった。
この日を境に、俺の中で高橋Aという女の存在はどんどん大きくなり、何にも変えられないものとなった。
特別仲が良い訳でも、お互いから近づこうとするわけでもなく、夏休み中会ったら「暑いね。宿題どう?」なんて言葉をボチボチ交わすような、俺の中で唯一の学校でできた、いわゆる "フツウ の友だちのような関係"になった。
"フツウ の友だちのような関係"というなんとも曖昧な言葉を使ったのは、どうやら俺がアイツのことを友だちとして認識できない性になりつつあるからだ。
アイツの綺麗な髪が風に靡く度に、アイツの優しい声が聞こえる度に、アイツのキラキラした目で俺を見つめる度に…その全部が頭から離れなくて、俺は夏いっぱいアイツのことで頭の中がいっぱいだった。
なんなら、どうやったらもっと仲良くなれる?なんて考えたのは間違いなく人生で初めてだった。
こんななんとも小っ恥ずかしい気持ちを抱えて夏休みが明けた頃、オフクロが泣きそうな顔で話しかけてきた。
「多分、高橋さん家…旦那さんDV…してるのよね」
上の階…高橋Aの家が最近騒がしいと、俺らの間で話題になって数日、オフクロから出た言葉は、俺にとって初めて聞いた言葉だった。
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作者名:ポット | 作成日時:2021年9月12日 17時