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10 baji ページ11

そんな俺とアイツの間は特に埋まりもしないまま、気づけば夏になった。
あの日は確か、毎日学校に行くようになってから絡まれることなんか無かったのに、行き道にどこぞの一年に絡まれて少々疲れて教室で眠ることにしてた日だった。
千冬がバカのくせに風邪引きやがって学校に来てないお陰で、悠々と眠っていた。

「場地さん!場地さん!何してんすか!早く集会行きましょうよ〜」といつも俺を急かしてくる松野千冬とは、アイツと出会った一週間程経った頃に出会った。
俺のにとってはなんてことないでも、千冬にとっては何かが特別だったらしく、変に懐かれた。根気強さと腕っ節の強さ、オマケに誰よりもピンと筋の通った千冬は、少々ダルいところもあるが、嫌いじゃない。

いないのはいないで寂しいもんだな…と思いながらも、気づいたらしっかり眠っていて、昼飯を食ってからは記憶がない。

4月から休まずに登校し続けた事もあっての、午後を寝過ごした罪悪感からか、キシキシとなにかの軋む音でゆっくりと目を開けた。
そこには、いつか見た、夢のようで夢じゃなかった光景。
木漏れ日の中、前の席、この黒髪、白い肌、流し目…
俺をじっと見つめてるその姿は「綺麗」という言葉がピッタリだった。
そうか、俺は初めてコイツを見た時から気に入ってたのかもしれない。だから、怯えられてるのが嫌で…

「…オマエ…」

よく目をこらして見ても、なんともリアルな夢で、ゆさゆさと髪を揺らすアイツが、妙に愛おしそうな目で俺を見つめてる。現実ではそんな顔するわけねえか。あの時も、怯えた顔して顔逸らしてたもんなぁ。と思うも、コイツの反応を見て、段々現実であったことに気づく。

顔を赤らめて

「学校、終わったよ。たまたま廊下通ったら寝てたから…」

と呟く姿を見て、「かわいい」と呟きそうになった。
なんだコイツかわいくないか。
平常心を装うも、どこか変に緊張しちまう。
こんなに緊張したのは人生初めてで、ドクドクドクとうるせぇ心臓が聞こえていないか不安だった。

その上

「バイ菌入るよ!」

と、俺の傷口を見て必死な顔をして、絆創膏を付けたがる。
はじめての表情に、思わずビックリしてしまった。
なんで、そんなに懸命になる?必死になる?と聞きたくなるくらい、コイツの目はクソ真面目で、新しい顔をコロコロ見せるコイツに、段々と心を開いていく自分を認めたくないくらいだった。

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作者名:ポット | 作成日時:2021年9月12日 17時

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