【男主】傷ミ【チェンソーマン】

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コベニはじりじりとデンジに詰め寄っていく

当のデンジもすでに警戒を始めていて、ファイティングポーズを取っていた

「きゃエエエ！！」

コベニが発狂し、包丁の切っ先をデンジへ向けて突っ込んでくる

でも早川が包丁だけど蹴り上げてそれを妨害した

宙を舞う包丁

それに気を取られていたコベニは横から来る姫野に気付かずに腹部に肘を入れられた

「げへアッ」という声を上げて、床に倒れ込む

それを見た悪魔は嬉々として笑い声をあげる

「うっさいな〜アキ君 狐で飲み込めば終わるんじゃない？」

「…コン」

右手で狐を作った早川だったがあの時のように姿を現さない

「…やっぱり狐は来ませんね、ここは外と断絶されてるんだ…」

「狐の体は京都にあるからね…じゃあ私のゴーストでやるか」

姫野は右手を突き出し、強く拳を握った

すると悪魔の頭部がもぎ取られたかのように一部が欠損し

それを皮切りに肥大化した悪魔の体を引きちぎっていく

「いた、た！あ！」

無数にある顔達はそれぞれに悲鳴を上げる

耳心地は最悪だ、何でもいいから耳に突っ込んで塞ぎたい

でもそんな事を言っている暇はなかった

「げ〜…デカくなった！」

突然悪魔が更に大きくなって廊下を塞いできた

その場にいた全員が後退する中

俺はコベニの手を掴んで引きずるように悪魔から距離をとる

「ここに私の心臓はない ここは胃の中…私の弱点は8階にはない、私と契約をする以外生きては帰れない」

悪魔の言葉に全員の顔が強張った

「はん！ど〜せ！俺を殺しても外には出さねえくせによ！」

「それはないよ」

デンジが開き直ったかのように言うと、姫野が口を開く

悪魔の使う契約という言葉には強い力がある

契約を片方が守ればもう片方も絶対に守らなければいけない

守れず破った方は死ぬ

悪魔の契約は単純明快 そこ嘘偽りは存在しない

「姫野先輩…そいつは殺すべきです、一度そいつを殺して外に出た後に対策を練ればいい このままじゃみんなホテルで餓死ですよ…」

振り返ると憔悴しきった顔をした荒井が布団をかぶったままそこに立っていた

彼の口から「殺すべき」という言葉が出てきたことに衝撃を受ける

でもそれも仕方のない事なのかもしれない…

他の階にも行けない窓からも出れない、食べ物もなく、水は出るが凌げてもよくて一週間

こんな状態でおかしくならないのはごく一部の人間だ

荒井の目からは今までの純粋さは消え、血走った眼で人の死を望んでいた

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