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制服から滴る雫をそのままに、とりあえず悠馬のゆめマスクを手に持ち、悠馬の部屋に向かう。
半開きのドアを開けると、柳が呆然と窓を眺めていた。
……多分、悠馬は、帰っちゃったんだろうな。
「やなぎ」
ドアから声をかけると、彼は顔に垂れた髪を耳にかけ、こちらを見た。
「…やぁ、A」
力なく笑う。
私は冷静に問いた。
「悠馬に何をしたんですか」
「…………」
答えない。
彼は体を窓の方に向けてしまった。
窓越しの土砂降りは、さっきと違って心地いい音に聞こえる。沈黙を強調し、悠馬に上手い言葉をかけてやれなかった私と、同じく悠馬を傷つけた柳を…より惨めに演出した。
…
「……悠馬は、帰っちゃいましたよ」
「…………わかってるよ」
柳の視線に合わせて彼の足元に目をやると、散らばったガラスの破片と少額のお金が。
恐らく、悠馬が意気揚々と溜めていた「借金返済」の為の貯金箱だろう。
……何があったのか、大体想像は付く
危ないな、と思いながら片付けを申し出ようとすると、柳が小さく笑った。
「あははは………、…Aはさぁ、優しいね」
「……優しくなんかありません。貴方にも、悠馬にも」
柳は笑顔でため息をつく。声が震え始めて、……
「悠馬はね、僕の事を優しい、だってさ」
「それはバカですね」
「……ね、ほんとに」
ザァア…と雨の音ばかり響く。
柳は黙ったまま力なく二階に上がっていってしまった。
「話は終わってないです」
声をかけても返してくれない。
……私はどうする事も出来ず、割れた貯金箱を片付け始めた。
_______________________________________________
片し終えて柳と悠馬の部屋を出ると、白寮の談話室に新兎くん達が集まっていた。一、二年生だけでなく、ローテーブルを囲んでソファに座る仁さんと虎さんも居る。
隣にそれぞれ巳影と千鶴が座り、残りの生徒はソファの横に立っている。
「……三すくみ議会、だな。」
虎さんがぼそりと呟いた。
それを聞くなり仁さんはため息をつく。
「……ああ。」
……三すくみ会議、か。凛太朗が居なくて成り立つのだろうか。
悠馬のゆめマスクを握りしめたまま、水が浸透しきって重く冷たくなった制服を見て、誰にも声をかけずにその場を後にした。
しばらく歩き黒寮に入る時、ふいに肩を掴まれた。
反射的に振り返ると、そこには、凛太朗が……いた。
「ただいま、A」
彼はニッ、と笑い、ずぶ濡れの私の頭を力強く撫でた。
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クウ(プロフ) - 初めまして。続き楽しみです。 (2020年7月25日 17時) (
レス) id: e1d577414c (このIDを非表示/違反報告)
ハト(プロフ) - るーさん» 返信が遅れてすみません。ありがとうございます！短編集の件ですが、なかなか更新できていなくて、もう何話か書いてから公開しようと思っております。それまでお待ちいただけると嬉しいです！！ (2019年9月3日 7時) (レス) id: 28b0102360 (このIDを非表示/違反報告)
るー - 夢主ちゃんがすごくタイプで好きな感じです。ストーリーも面白いです！これからも応援してます！もしよければ短編集の方のパスワードを教えてもらってもいいですか？ (2019年7月30日 23時) (レス) id: e7803b918a (このIDを非表示/違反報告)
ハト(プロフ) - レス返せてなくてすみません！どの激励のお言葉も嬉しく読ませていただいています！！二期始まる前に完結させれるように頑張ります……！！ (2019年7月26日 16時) (レス) id: 28b0102360 (このIDを非表示/違反報告)
hermes753(プロフ) - 初めまして!めっちゃくちゃ面白くて一気読みしちゃいました。更新待ってます!!! (2019年6月18日 0時) (レス) id: 8867b9a324 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハト | 作成日時：2018年11月29日 11時
