［汎愛］ ページ43
4A
_お付き合いしてません
(kj)
さいた さいた
チューリップのはなが
ならんだ ならんだ
あか しろ きいろ
どのはなみても きれいだな
ab「どうしたの急に童謡なんて」
kj「、ふふ、ピッタリやなぁ、おもて」
ab「何と？」
kj「ないしょ」
あぶな。阿部ちゃんが隣に座ってきたの気づかんかった。
ru「康二くん」
kj「ん？」
阿部ちゃんのぬくもりを塗り替えるようにラウが腰掛けてきて。耳許で名前を呼ばれただけで、芯が疼いた。
ru「今日は？」
kj「Aやで」
ru「ん、わかった。岩本くん車できてるって」
場所はいくつか候補があって、アルファベットだけで通じるようにしている。秘密の暗号ってやつやな。
はじまりは、たしかラウだったっけか。
ぬくもりがほしくて。家だけやなくて、常にだれか隣におってほしかった。
俺んちに泊めた日。正直俺がベッドに誘ったのは疾しい気持ちなんてなかった。めめに感化されたのか、恋バナに部類する質問ばかりされて。襲ってくる睡魔とたたかいながらぽつぽつと応えていたら、大きな掌に視界を閉ざされて。…唇が、触れた。
ru『俺のはじめて、康二くんがもらってよ』
ラウの瞳はいつもきらきらしとるなぁ、って、思っとった。でも、指の隙間からみえたそれは、艶を孕んでいて。拒否なんて、できんかった。
その次は、ダテ。個室の料亭で、ついぽろっとその日の出来事を話してしまった。そんなこともうやめたほうがいいと止めてくるか、はたまた軽蔑されるか。咄嗟に身構えたけど、どれも違った。
dt『それを聞いた俺に、康二はどうしてほしいの？』
俺に回答権を委ねられるとは予想していなくて。向かい側から隣に移動してきて、誘惑するように頬から輪郭へするすると這う指に、用意していなかった返答を吐き出した。
俺はまた、道を踏み外した。…自らの意思で。
そして最後は…、
kj「！？、わっっ、んぅ、！」
飲み終えたものを捨てて新しく買いに行く途中、経緯をぼんやり思い起こしていると突然腕を引かれて、扉が閉まると同時に暗闇で唇を奪われる。やさしい匂いとは裏腹な、甘くて強引なくちづけ。犯人はまさに今、頭に思い浮かべた人や。
kj「てるに、」
あか、しろ、きいろ。
…花言葉は合ってへんけど、俺はこの三人が与えてくれる甘い甘い蜜に酔いしれている蜂みたいなもん。
俺にも蜂みたいな毒針があれば、俺から離れていかんのかな、なんて狂気じみたことを思い浮かべる。
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作者名：微.
| 作成日時：2020年8月9日 21時
