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fk「あべちゃん、俺がいいよって言うまでぜったい目開けちゃだめだよ、いーい？」
ab「うん、わかったけど、道中を見せられない店って何？」
fk「いいからいいから、そんな不安がらないで？」
俺はただ、ちょっとでも感動してもらいたいだけ。
平日でも人混みが多くて、がやがやする人々の声にキョロキョロしようとする阿部ちゃんの肩をそっと抱いてエレベーターに乗り込む。ここまでくれば、あとは静かだ。
fk「ちょっとごめんね」
ab「えっ、なに、」
エレベーターのアナウンスが聞こえないように、阿部ちゃんの小さな耳をそっと塞ぐ。
ab「まだ着かないの？」
fk「もうすくだよ」
エレベーターを出て予約していた時刻と苗字を告げると、ウェイトレスさんが奥の個室へ案内してくれた。
パタン、と扉が閉まってふたりだけの空間になる。
fk「もう目開けていいよ」
阿部ちゃんの肩に手を置いて合図すると、長い睫毛がはためいて黒い瞳がそれを映した。
ab「えっ、…綺麗、」
fk「ふふ、でしょ？」
ab「…すごい、っ！」
時差で阿部ちゃんは大はしゃぎして、コートを脱ぐのも忘れて窓に張り付くように景色を眺めている。
fk「そんなに喜んでもらえると思わなかったよ」
阿部ちゃんの隣に立って、俺も景色を一望する。
ab「ここ、どこなの？」
fk「スカイツリーのレストラン。前にはっしー達と一緒に来たけど、阿部ちゃんこの前撮影で見れなかったでしょ？」
ab「うん、てか、夜ははじめてだよ」
fk「そっか。ほら、上着かして？」
ab「え、、あ、そうだよね、ありがと」
夢中になっちゃった、と照れ笑いを浮かべて、ハンガーを持って手を差し出した俺にふわふわのコートが渡された。コートのほうが阿部ちゃんの匂いがつよくて、ちょっと緊張しはじめた。
fk「コースにしたから好きなの選んで。時間気にしないで、ゆっくり食べてね」
ab「うん、ありがと」
どれにしよう、と阿部ちゃんがメニューを興味津々に見始めて。優柔不断だから、これは時間かかりそうだな、と隠れてくすりと笑った。
『お飲み物はどれになさいますか？』
fk「阿部ちゃんは頼みたいのある？」
ab「うーん、いっぱいあってわかんないなぁ、ふっかにお任せする！」
fk「ん、おけ。じゃあこれで」
ab「えっ、」
『かしこまりました。少々お待ち下さいませ』
注文をすべて終えて、ウェイトレスさんが出ていった。
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作者名：微.
| 作成日時：2020年8月9日 21時
