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fk「どした？阿部ちゃん飲めないやつだった？ボトルで頼んじゃったけど」
ab「いやだって、一番高いシャンパン選ぶからびっくりしたんだもん」
fk「さっき阿部ちゃんが選んだメニューはシャンパンが一番合うって教えてもらったでしょ？」
ab「そうだけど、」
fk「いつも頑張ってるんだから、たまには甘えて羽伸ばしなよ。ね？」
ab「…うん、」
まだ遠慮が勝っていて複雑そうな顔してるのも、かわいい。自己犠牲の塊だからな、阿部ちゃんは。こういうの、きっといつまで経っても慣れないんだ。そんな阿部ちゃんを、俺が甘やかしてあげたい。
ab「、ん！んまぁ！」
fk「ふははっ、よかった」
いつもみたく指をパッと広げて口元を隠す。でもモグモグしてる隠しきれてない頬は小動物みたいで。だけど食器は音を立てず上品に食べ進めている。
ab「美味しいよふっか！」
fk「うん、俺のも食べてみる？」
俺の提案に頷いた阿部ちゃんはフォークを乗り出して差し出すと、躊躇いもなくぱくっとそれを食べた。これを世間では“あーん”のはずなんだけど。無邪気すぎて間接キスとやらにも気づいてなさそう。それも、阿部ちゃんらしいか。
fk「…あ、最初の赤ワイン零しちゃったみたいだから、ちょっとトイレでシミ抜きしてくるわ」
ab「ほんとだ、わかった、待ってるね」
少し頬が色づいて、シャンパンを傾けながら微笑んだ阿部ちゃんに背を向けて個室を出た。
赤ワインのシミをつけたのはわざと。
最近はもう先輩たちがトイレついでに会計を済ませてるのが主流だから、ただトイレに行くだけだとバレると思ったから。
先に会計を済ませて、さっと取れる程度につけていたシミを落とした。
fk「あの、予約の際に預かっていただいたものを受け取りたいんですが」
『深澤様ですね、こちらでお間違いないでしょうか？』
fk「はい、ありがとうございます」
用意していた花束を受け取って片手で背に隠して扉を開けた。
ab「おかえり、シミ抜きにしては早かったね」
fk「うん、案外すぐ取れたよ、ほら」
ab「あー、ほんとだぁー」
阿部ちゃんがシャツに気を取られてるうちに隠していたものを前に出す。
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作者名：微.
| 作成日時：2020年8月9日 21時
